2007年10月29日

パイプラインの国際政治学

とどまるところを知らない原油価格の高騰。1バレル=100ドルになる日も近いのでは…と懸念されています。
また、世界的な地球温暖化対策にともない原子力発電が見直され、ウラン価格も上昇を続けています。
(地球温暖化の主犯が二酸化炭素なのかどうかとか、原子力発電所の建設・運転にだって化石燃料を消費しているじゃないか…という議論は、ここでは措くとします)

石油にウランにレアメタル…あらゆる鉱物資源を輸入に頼る日本にとって、資源価格の高騰は死活問題です。国際資源争奪戦の行方には目を離せません。



世界新資源戦争

宮崎正弘氏は、中華人民共和国の全33省を踏破した中国ウォッチャーとして知られています。本書の中心となるのも、中国そしてロシアの資源戦略です。

プーチン大統領率いるロシアは、いまや資源商社と化しました。外貨獲得のみならず外交の道具として豊富な資源を活用しています。
ロシアの支配から抜け出そうとする旧ソ連諸国に対し、石油やガスの供給を止めたり、パイプラインのルートを変えたりと妨害工作。ヨーロッパ諸国もまた、ロシアからの資源供給に依存しています。これはEUの団結を揺るがすものです。
ヨーロッパには「パイプラインの国際政治学」と呼ぶべき、資源獲得をめぐる複雑な利害関係が現出しているのです。

著しい経済成長を続け、資源輸入国大国に転落した中国。世界中から資源を買い漁り、アフリカ・中南米諸国に次々と進出しています。
中国を「資源爆食怪獣」と呼ぶ宮崎氏は、アジアの資源戦争において中国以外に問題はないとまで言います。
世界各国に資源供給先を確保したかに見える中国の死角、それは深刻な水不足です。石油がなくてもヒトは生きていけますが、水なしでは生きていけません。

資源貧国・日本の救いは、世界一の省エネルギー・環境技術。日本を100とした場合の各国のエネルギー効率はEU170、アメリカ200、中国は870、ロシアに至っては1800なんだそうです。

資源争奪をめぐって熾烈に繰り広げられる、グレートゲーム。日本人のあまりの無関心さを痛感させられる一冊です。本書は資源戦略のみならず、世界の紛争を俯瞰するうえでも役立ちます。

宮崎正弘のホームペイジ

(10月28日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
よ〜く考えよう、石油は大事だよ♪
レアメタル・パニック


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2007年09月02日

当たり前の話…日本は核武装せよV

核兵器を「持たず・作らず・持ち込ませず」の非核三原則。しかしながら現在の日本は、核兵器について議論してもいけない「非核四原則」とも呼べる状況です。
核武装について、安全保障について、忌憚なき議論がなされているとは到底思えない今のニッポン。「当たり前の話をしようではないか」と西部邁氏は言います。



核武装論

西部氏は「非核三原則」と「核の傘」に疑いの目を向けます。
まず「非核三原則」は明らかな偽りであり、正しくは「非核二原則」と名付けるべきだと。常識的に考えてみましょう。日本に寄港する米軍空母が、数日間の滞在のために、核兵器をどこかへ降ろして来るでしょうか。三原則の三番目「持ち込ませず」はウソに違いありません。
また「日本はアメリカの核の傘に守られている」という論者も、アメリカの核兵器が日本に持ち込まれずして、核の傘が有効だとでも思っているのでしょうか。
そもそも「核の傘」自体に、疑いを持たねばなりません。仮想敵国から日本への核攻撃があったとします(ファースト・アタック)。それに対して同盟国アメリカが報復攻撃をします(セカンド・アタック)。当然ながらアメリカは、自国への報復攻撃(サード・アタック)を覚悟のうえで核ミサイルを発射せねばなりません。それでもアメリカは、日本を守ってくれるのでしょうか。

イラク戦争は大きな問題提起をしました。それは予防的先制攻撃の是非です。
アメリカはイラクに対し「自衛の先制攻撃」をしましたが、イラクに大量破壊兵器は見つからず、テロ組織の根拠地でもありませんでした。
アメリカの「侵略」に対し非を鳴らした西部氏ですが、予防的先制攻撃という考え方を正当防衛の一種であると肯定します。しかしその一方で、先制攻撃には間違いがありうることを強調しています。人間は間違いを犯しうる存在です。
核兵器は瞬時にして大量の生命・財産を奪い、放射能による被害は広域に将来に渡って及びます。核による先制攻撃は、絶対にあってはなりません!
日本国憲法第9条に第3項を設け「核兵器を持っても作っても構わないがそれは報復にのみ用いられる。たとえ予防という名の自衛のためであっても、先制使用は許されない」と規定すべきだと西部氏は述べています。
「核を先制攻撃には用いない、報復にのみ用いる」ということは、核によるファースト・アタックに耐えよということです。これは非暴力・不服従を掲げたガンジー主義に通じます。

冷戦が終結して迎えた多極世界。アメリカのニュー・リアリストと呼ばれる研究者たちのあいだでは、核の拡散こそが世界に安定をもたらすとの議論があります。自滅をいとわぬテロリストに抑止の論理は通用しませんが、逆に言うとテロリストに核兵器が流れることはない保証があれば、核の拡散に不都合はないとの考え方です。
また核兵器を全廃しても、人類から核技術が失われるわけではありませんから、全廃した直後に特定の国家・集団が核兵器を独占的に保持し得るという、極めて危険な状況を想定せざるをえません。

百発百中とは言わないまでも、命中率90%位のMD(ミサイル防衛システム)でもあれば、核武装は必要ないでしょう。しかし高価なのに効果がないMDは、アメリカの軍産複合体に莫大な利益をもたらすだけです。
私は核武装が(倫理的に)正しいと言うつもりはありません。
核兵器は、非人道的な大量破壊兵器です。また核エネルギーの利用そのものに、放射能の危険性や放射性廃棄物の処理問題が付きまといます。
では、この世に人道的な武器はあるでしょうか。
核の脅威から日本を守るものはなんでしょうか。

たとえ通常兵器によるものであっても先制攻撃は絶対にしないという強固な信念、しかし平和国家・日本への武力行使には核による報復が待っている…そんな日本に私は棲みたい。

【不純文學交遊録・過去記事】
日本は核武装せよ
日本は核武装せよU

(8月27日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 16:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月29日

いる?いらない?参議院

今日(7月29日)は第21回参議院議員選挙の投票日です。
消えた年金問題に、相次ぐ閣僚の失言と事務所費用疑惑。与党にとっては、かつてない逆風のなかの選挙戦となっています。参院選での勝敗は直接政権交代へと結びつきませんから、与党支持者も安心して「お灸をすえる」ことができるのも大きいかもしれません。

日本の国会は、衆議院参議院の二院制です。
衆議院と参議院で異なる議決となった場合、衆議院の議決が優越するため「衆議院のカーボンコピー」と揶揄されることも多い参議院。さらに今回の選挙では、2005年のいわゆる「郵政解散」で涙を呑んだ元衆議院議員たちが何人も出馬し、衆院選の敗者復活戦の様相を呈しています。
こんな参議院でいいのでしょうか?


参議院なんかいらない

『参議院なんかいらない』という衝撃的な本を書いたのは、参議院の天皇とまで呼ばれた村上正邦、小沢一郎の知恵袋・平野貞夫、共産党の論客・筆坂秀世の、いずれも元参議院議員の三氏。
ただし本書の主旨は「こんな参議院はいらない」であって、参議院無用論ではありません!
政治改革の本丸は、参議院の大改革なのです。

郵政解散は、参議院を「殺し」ました。
参議院で否決された法案は、両院議員協議会にかけるか衆議院に差し戻されます。しかし小泉純一郎首相(当時)は郵政民営化法案が参議院で否決されると、衆議院を解散するという憲法無視の暴挙に出ます。
解散総選挙で自民党が圧勝し、ふたたび郵政民営化法案が参議院に送られると、法案を否決した自民党参議院議員たちは、次の選挙での公認欲しさに賛成に寝返りました。
参議院は二度死んだのです。

衆議院の数の政治に対し、理の政治・良識の府と呼ばれる参議院。
任期6年・解散のない参議院は、党利党略を離れ政局に左右されずに国の未来を論じる場でなくてはなりません。つまり政党名で選ぶ比例代表制は、参議院にふさわしくない選挙制度です。本書では参議院議員を地方代表として各都道府県から二名選出(人口比例ではない)し、全国区もしくはブロックで50人ほど選出する選挙制度を提案しています。
そして3年おきの半数改選の廃止。3年おきの選挙だからこそ、参院選が政局になってしまいます。6年ごとに一括改選することで議員は長期的視野をもち、憲法や教育といった国家の根幹に関わる問題を審議することができるのです。ただし、これには憲法改正が必要となります。
日本国憲法第46条
参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。

ほかにも内閣総理大臣を指名しない、大臣には就任しない、決算審議を参議院の独自権限とするなどの参議院改革案を提案しています。
憲法オンブズマンの設置は、現行憲法下でもできる大改革です。憲法を無視し人間を軽視した世の中の動きに、参議院が警鐘を鳴らすのです。これは行政や司法機関のみならず、一般企業・マスコミの暴走に対しても向けられます。
マスコミといえば選挙のたびに行われる出口調査、あれって憲法違反じゃないですか?!
日本国憲法第15条第4項
すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。

(7月29日読了)


管理人のひとりごと
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 19:24| Comment(0) | TrackBack(2) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

発覚!あるある大利権

納豆のダイエット効果を捏造したとして問題になった、関西テレビの「発掘!あるある大事典U」。テレビ局のモラルが問われた事件ですが、その陰にひそんでいるのは民放の番組制作の実態です。
「発掘!あるある〜」のスポンサー企業・花王が電通に支払ったと推定される額は、年間約50億円。これを番組一本あたりにすると約1億円です。うち電通の取り分が1,500万円、残りの8,500万円がテレビ局に渡ります。ところが下請けのテレワークに支払われた制作費は約3,200万円。差額の5,300万円はどこへ…
それは電波料です。しかし総務省が徴収する電波利用料は、地方局1局あたり年間わずか8万3000円。実は電波料の大部分は、キー局が地方局に支払う補助金だったのです。
さて、制作費3,200万円からスタジオ経費などが引かれ、孫請け会社のアジトに支払われたのはたったの860万円。
これでは質の高い番組作りなんて望めないわけです。

メディアの裏側を鋭く抉り、最大1日3万ページビュー・1万5千超のユーザーがアクセスする池田信夫 blog。その記事を集成したのが『ウェブは資本主義を超える』です。



ウェブは資本主義を超える

池田信夫 blogのサブ・タイトルは「IT&Economics」。
メディアを論じることは報道のあり方を批判することであり、放送・通信産業について論じることは日本の経済構造へ深く切り込むことです。
著作権を作家の死後70年(現在は50年)に延長しようとする動きがあります。しかし実際に守られるのは作家(とその遺族)の権利でも、ましてや豊かな文化でもなく、流通業者の利益です。
デジタル放送・携帯電話の規格など日本発の世界標準を目指したプロジェクトは、ことごとく失敗してきました。
池田氏はインターネットの発展が、大企業や官僚機構などの既得権益を破壊する可能性を歯切れよく論じています。

本文から『ウェブは資本主義を超える』というタイトルを想起させる、面白い記述をご紹介します(第3章-3「創造的破壊」)。
マルクスが『資本論』で想定する未来社会は、共産主義とも社会主義とも呼ばれず「自由の国」とか「自由な個人のアソシエーション」と呼ばれています。その自由とは、自由時間のことです。
資本主義とは資本家が物的資源を所有して労働者を支配するシステムであり、その有効性は人的資本や知的労働の重要な情報産業では低下します。
コンピュータの計算能力の価格は、1960年代から今日までに1億分の1になりました。これは100億円かかった工場建設費が100円になったようなものです。物的資源の希少性が制約にならないサイバースペースでは、マルクス的な「自由の国」が実現しているのです。
ただしこの「自由の国」は、「必然の国(=資本主義社会)」に支えられたサブシステムでしかありえませんが。
池田氏は、死ぬまでにマルクスについての本を書こうと思っているそうです(池田信夫 blog 7月2日より)。

(7月22日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
日本のメディアは“杉林”
2011年、テレビをまだ見てますか?
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 14:26| Comment(2) | TrackBack(1) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月04日

第3のシナリオ

2008年は、北京でオリンピックが開催されます。
急速な経済発展を続ける中国に、より多くの注目が集まることでしょう。
経済的にも軍事的にも、アメリカに比肩しうる超大国への道を歩む中国。現在のアメリカは中国をどう見ているのでしょうか。

今後の中国はどこへ向かっていくのか、アメリカには大きく二つの見方があるといいます。
ひとつは、中国における経済の自由化は、政治や言論面での自由化を促すであろうというものです。
一方、経済発展の恩恵を受けているのは沿岸の大都市だけであり、内陸部は依然として貧しい暮らしを強いられています。拡大する貧富の差や政治的抑圧に人民が蜂起し、中国は統一を維持できずに崩壊・分裂するというのが、もうひとつのシナリオです。



危険な幻想

著者である『ロサンゼルス・タイムズ』の外交記者ジェームス・マン氏は、第3のシナリオを提示します。それは中国が経済成長を続けても政治的にはなにも変わらず、一党独裁体制が続くというものです。たとえ政権党の名が共産党ではなくなっても。
中国では経済発展の恩恵を受けた中産階級が形成されつつあり、自由に目覚めた彼らが共産党支配に対抗し民主主義を実現するのではないか…このような見方にもマン氏は異を唱えます。むしろ彼らは民主主義を否定すると。
中国の富裕層は人口比ではわずかです。中国政府は都市部を優遇し、農村地域の近代化は遅れています。全国的な選挙が行われるなら、少数の都市富裕層と大多数の地方農民とではおのずと違った投票行動をとります。そうなると中国の中産階級たちは、民主化よりも現状維持を望むというのです。
崩壊・分裂のシナリオに対しても、これまで中国が内戦や分裂を経ても再び政治的統一を回復してきた歴史を踏まえて、懐疑的です。

本書のテーマは「アメリカ政府の中国観」であって、中国の現状分析ではありません。
拡大する中国市場は、アメリカ経済界にとっても大きな魅力です。ことあるごとに人権外交を振りかざすアメリカですが、中国に対してはビジネスの論理が優先してきました。そのためアメリカには、中国はいずれ民主化するだろうという「気休めのシナリオ」が蔓延してきたと、マン氏は指摘します。
ただ、終始同じような主張が繰り返されているので、ちょっと退屈になる本です(笑)
巻末の訳者による座談会が、本書の内容を上手くまとめています。

(5月3日読了)
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2007年04月08日

レアメタル・パニック

昨年(2006年)は原油価格が高騰し、日本国内はちょっとした騒ぎとなりました。
イラン情勢の先行き不透明さや中国・インドの急激な経済成長など要因は多々あげられますが、石油が枯渇に直面したわけではありません。
しかし、埋蔵量が極めて少なく産出国も限られており、そのうえ日本経済の中枢への影響がはかりしれない資源があります。レアメタル(希少金属)です。

レアメタルは、製品の小型化・軽量化・高性能化・省エネルギー化に欠かせない素材です。

液晶パネルには、インジウム
デジタルカメラのレンズには、タンタル
リチウムイオン電池には、コバルト
高性能モーターの磁石には、希土類(レアアース)。

レアメタルには、その名の通り埋蔵量そのものが希少な金属から、埋蔵量はあるが需要が限られている(先進国のハイテク産業にのみ用いられる)ために採掘コストが高いもの、産出国の政策や急激な経済発展など人為的要因で希少となったものなどがあります。
レアメタルは産出国も、アフリカ・南米・旧共産圏など限られた地域に偏在しています。とりわけ一大産出国である中国の経済成長は、レアメタルの急激な高騰=レアメタル・パニックの最大の要因です。中国は資源の供給国から、巨大な消費国となりました。さらに鉱山開発による環境汚染や労働争議も、供給の不安定要因です。

日本のハイテク産業は、レアメタルなしには成り立ちません。
備蓄はもちろん、廃棄物のリサイクル(都市鉱山の開発)や代替素材の研究、中国への環境・省エネルギー技術の提供など、多角的な戦略が求められます。
またレアメタルの価格高騰は、採掘コストが採算に合わないとして見捨てられた日本国内の資源の開発に、再び目を向けるきっかけとなるかもしれません。

(4月2日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:13| Comment(4) | TrackBack(1) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月08日

おやめになったらどうするの?

昨年は皇室に、悠仁親王殿下がご誕生されました。
皇太子殿下、文仁新王殿下に次ぐ皇位継承者となり、女性天皇・女系天皇を認めようとする皇室典範改正論議は、ひとまずお預けとなりました。
女性天皇女系天皇の違い、当blogへお越しのみなさんは、もちろん理解しておられますよね。

今回は皇位継承問題、天皇と憲法、皇室報道などに関する刺激的な議論がまとめられた一冊です。



天皇と日本のナショナリズム

とりわけ、宮台氏と横田氏による天皇と憲法をめぐる議論が興味深かったので、ご紹介いたします。
日本国憲法の第一条で「日本国の統合の象徴」と謳われる、天皇。
日本には天皇という“王様”がいらっしゃいますが、では日本は立憲君主制国家なのでしょうか?

(キング)と天皇(エンペラー)の大きな違いは、君主が俗人であるか否かにあります。
キングは世俗の統治者であり(実際の政治は閣僚が統治するとしても)、その権力は憲法によって国民から付託されたとのカタチをとるのが、立憲君主制です。
エンペラーとは、聖性を帯びた君主です。
(管理人注;宗教的存在と言った方が解りやすいでしょうか?)
聖性は、憲法の約束事の内側に囲い込むことができず、立憲君主制が成り立ちません。
大日本帝国憲法で統帥権を持っていた戦前の天皇は、立憲君主と言えなくもありませんが、国民の象徴との規定しかない日本国憲法においては、立憲君主制はありえないのです。

憲法とは、国民から統治権力へ対する命令であり、政府が国民に対して守る約束事です。
(ですから「憲法には国民の権利ばかり書いてあって、義務が書かれていないのはオカシイ」と言う人は、オカシイことになります。政府から国民への命令は、法律です)
天皇は象徴ですから、統治権力ではありません。
そうなると、日本国憲法に記された天皇の国事行為とは、憲法によって定められた天皇の権限や義務ではないことになります。
宮台氏は、国事行為とは内閣が天皇にお願いしてもよい公務のことであり、天皇は国事行為を放棄してもよいと言っています。

天皇のご公務は、大変です。
法律や条約が公布される際に捺される御璽は、純金製で4.5キロもあります。
外国の要人や大使との謁見に、祝賀行事へのご出席、さらに皇室に代々伝わる祭祀(最も重要!)も執り行わねばなりません。
それから、過熱するマスコミ報道へのご対処も大変でしょう…
宮台氏は、天皇が退位されたり、皇族方がみな皇位継承を拒否されて天皇が空位になっても、日本国憲法はどうすることもできないのだと言います。
わたしたちは、天皇陛下や皇族方に過大なご負担を掛けてはいないでしょうか?
私は天皇が、日本の歴史・文化の継承者として、人類の平和と繁栄・文明と自然の調和を祈るシャーマンとして、千代に八千代に続いてゆくことを願います。

(3月6日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月04日

お金に国境はない!

あなたが1,000ドルの外貨預金をしたとします。
その1,000ドルは一体どこにあるのでしょう?

あなたが預金した1,000ドルは、日本には存在しません。アメリカにあります。
米ドルを扱う日本の銀行は、アメリカの銀行に口座を持っています。このアメリカ側の銀行をコレスポンデント銀行コルレス銀行)、そこにある日本の銀行の口座をコレスポンデント口座コルレス口座)と呼ぶそうです。
※コレスポンデント=中継地

日本とアメリカを往き来するのはデータだけで、円は日本から、ドルはアメリカから動いてはいません。
世界各国の中央銀行が保有してるドル建て外貨準備高はすべてニューヨークのコルレス銀行に預けられており、アメリカ政府が自国の銀行に対しコルレス口座の凍結を命じれば、世界中のすべてのドル預金を差し押さえることができるのです。

アメリカは、マカオのバンコ・デルタ・アジアにある北朝鮮資金を凍結する、金融制裁を発動しました。
なぜアメリカは、外国の銀行にある資金を一方的に凍結できるのか。その秘密がコルレス銀行(コルレス口座)にあったのです。
また、国際的な金融取引はすべてSWIFT(The Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication=国際銀行間通信協会)に記録されています。
いわゆる“テロとの戦い”で、アメリカ政府はSWIFTに情報提供を申し入れ、テロ資金の流れを解明したのです。

世界を震撼させた、2006年の北朝鮮によるミサイル発射実験および核実験。
アメリカによる金融制裁は、北朝鮮に決定的なダメージを与えており、だからこそ金正日にはアメリカ本土を攻撃できる核ミサイルが必要なのだと、橘氏は言います。

本書には、2006年のライブドア事件や1998年のカシオ事件など、マネーロンダリングに関する数々のエピソードが克明に語られています。
国際金融のカラクリがわかる、目からウロコの一冊です。
脱税目的であったり、テロ資金であったり、犯罪で得た利益であったりと、匿名でやりとりせねばならないお金が世の中にはあるのですね。
最も匿名性が高いのは、もちろん今も昔も現金です。

世界にはタックスヘイブンと呼ばれる、税金のかからない国や地域があります。
富裕層は税金を払いたくなければ、いつでも日本から出て行くことが可能です。
相続税の引き上げなどの増税は、仕事や家庭を抱えて日本で生きていくことしかできない中間層を痛めつけるだけだ。それは控えめに言ってもかなり暗い社会に違いない…橘氏は、あとがきでこう書いています。

(2月26日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:20| Comment(4) | TrackBack(2) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月19日

日本は核武装せよ…U

北朝鮮と日・米・中・韓・露の6カ国協議が、2月8日〜13日にわたって行われました。
今回の合意では重油5万トンの緊急エネルギー支援、さらに核施設の無力化が実行されれば、重油95万トン相当のエネルギー支援が北朝鮮に対してなされることになります。

北朝鮮は協議のたびに要求のハードルを高くし、合意を履行せず、ついには核保有を宣言するに至りました。
そんな6カ国協議なんて、する必要があるのでしょうか。北朝鮮が「どうか経済援助してください」って泣きついてくるまで待てばいいんじゃないの…と思うのですが。
「拉致問題はどこで議論するんだ!」とのご批判はあるでしょうが、それこそ人権問題として国連でやったらいいと思います。
…素人考えでスミマセン。

当blogでは以前「日本核武装」の論点をご紹介しましたが、bk1でこの本の書評をしている佐伯洋一さんが、中川八洋氏の著書の併読をすすめていたので読んでみました。


日本核武装の選択



中川 八洋著



一般に核武装を論じる場合、核の抑止力・核による防衛のことだと思いますが、この本は違います。
日本による、北朝鮮の軍事施設への核先制攻撃を主張しています!
日本にとって真の脅威は、北朝鮮の核よりもミサイルです。いくら核兵器があっても、それを飛ばすミサイルや航空機がなければ、たいした脅威とはなりません。
射程1200qのノドンミサイルは日本に向けて実戦配備されており、これを破壊することは国際法上許されている「自衛の先制」の行使であると、中川氏は言うのです。
アメリカによるイラク攻撃は、大量破壊兵器が発見されず「自衛の先制」の根拠がなく違法となったが、北朝鮮の場合、その脅威は明白であると。
通常兵器ではなく核攻撃(米軍の核トマホークを日本へ導入)なのは、核ミサイルでなければ地下の軍事施設までは破壊できないからだそうで…
憲法上の問題は、第98条第2項において“合憲”であるとしています。
日本国憲法第98条第2項
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

…いくらなんでも先制攻撃しては、日本が逆に極東の「ならず者」になってしまうではありませんか。

しかし中川氏の唱える核武装プロセスは、とても現実的です。
・すべての核兵器はアメリカに発注する
・ICBM(大陸間弾道弾)は持たない
・核のボタンはアメリカとの二重鍵とする
あくまで日米同盟を堅持し、アメリカの核の傘を補完するための核武装です。
日本の核はロシア極東と中国が標的であり、ICBMは必要ありません。またICBMはアメリカへの脅威ともなるため、反米政治家が政権を握ってパール・ハーバーの愚を再び犯さないためにも、持つべきではないと言います。
中川氏は、日本が核兵器を独自開発することを否定しています(ただし技術的には可能であり、その場合、核実験が必要なプルトニウム爆弾ではなく濃縮ウラン爆弾とし、実験は行わないとします)。

一方で、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を搭載した数隻の潜水艦だけで日本が独自に核武装することを主張する兵頭二十八氏や、兵頭氏を支持する福田和也氏の論を、ナンセンスであると徹底的に批判しています。彼らはそれで、アメリカ・ロシア・中国に対抗しようと言うのですから。
アメリカと一戦交えることも辞さない勇ましい方々がいらっしゃいますが、現実には日本の平和はアメリカとの協調なしでは維持できないようです。

日本は、ロシア・中国という軍事超大国および独裁国家・北朝鮮に近接しています。
特にロシアは、冷戦が終結したとはいえ、依然として数千発もの核弾頭を保有しています。
中川氏によると、日本に対する脅威の度合いは「ロシア100・中共10・北朝鮮1」だそうです。
だったら北朝鮮を先制攻撃しなくとも、自滅するのを待てばいいと思うのですが…

(2月19日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
日本は核武装せよ
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:15| Comment(2) | TrackBack(4) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月04日

デフレ敗戦…

11月22日、2002年2月から始まった現在の景気拡大は、戦後最長だったいざなぎ景気(58ヶ月)を超えたと発表されました。
不況から脱したとされる、日本経済。しかしながら、この間の経済成長率は「いざなぎ」とは比較にならないほど低く、実感の全く伴わない景気回復となっています。また、大企業は高収益を上げているものの、その効果は家計にまで及んでいません。

平和に暮らす、戦争しない経済学




アメリカが2001年以降「テロとの戦い」に投じた戦費は4320億ドル
今でもイラクにかかる戦費は月に70億ドル
トマホークミサイルは一発3億円(←ここだけ円)

…など「経済学的に平和を守る」というサブ・タイトル通り、戦争にいかにコストが掛かるかが明かされます(ただし、短期的には戦争が利益を生むことも事実として併記されています)。
しかし本書の内容は、単に戦争のムダを指摘するにとどまらず、5年間続いた小泉政権への強烈な批判となっています。

長く続いたデフレ不況。その原因を森永卓郎は、小泉政権下で行われた不良債権処理が、アメリカのハゲタカ・ファンドを儲けさせるために行われたせいだと指摘します。
日本経済の回復には早急な不良債権処理が不可欠だと、アメリカに迫られた小泉政権。株式や不動産は外資ファンドに二束三文で買い叩かれ、利益が出るとあっさりと売り払われました。
こうして得られた利益が、アメリカの「テロとの戦い」の戦費に充てられたのかもしれません。
日本は、アメリカとの経済戦争に敗れたのです。

森永は日本経済復活へのファイナルアンサー で、現在は参議院議員の国際政治学者・舛添要一とともにインフレターゲット論を主張していました。
日銀が市場への資金の供給量を増やしていれば、デフレ不況はこんなに長引かなかったと、森永は言います。
日本をハゲタカ・ファンドに売った売国政治家に、愛国心を語る資格はあるのでしょうか。

(12月3日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】純ちゃんの不純な素顔
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:23| Comment(12) | TrackBack(0) | 政治・経済交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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