2007年08月08日

地球の現代史〜不確かな真実V

地球温暖化をめぐる報道には、不確かなものがあります。
今年2月、今世紀末に世界の平均気温が最大6.4℃上昇すると、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書の内容が報じられました。
気象庁翻訳;IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書(PDF)

しかし実際には、今世紀末の世界の平均気温は、温室効果ガスの排出量が最も少ないシナリオでは1.8℃(可能性が高い予測幅は1.1〜2.9℃)、最も多いシナリオでは4.0℃(同2.4〜6.4℃)上昇すると評価されています。
6.4℃とは経済高成長シナリオでの最大値であり、日本のマスコミは何の説明もなく6.4℃と報道していたのです。
地球環境問題の真実を知るために、今回はこの本を選びました。



地球史が語る近未来の環境

本書は日本第四紀学会の手になりますが、第四紀とは約260万年前から現在に至る、地質時代区分の最も新しい時代のことを指します。人類が飛躍的に進化し、また氷河期が繰り返し訪れた、地球史上特筆すべき時代です。
国際社会の今後を占うのに現代史の知見が必要なように、地球環境の未来を予測するには「地球の現代史」ともいえる第四紀の環境の研究が不可欠となりますす。

縄文時代の気候は現在よりも温暖で、海岸線は内陸部まで進んでいました(縄文海進)。
縄文時代の江戸 (古代で遊ぼ)

これは氷床が融けて現在よりも海水量が多くなったからでしょうか?
ところが当時の海水量は、むしろ現在よりも少なかったのです。
地球の表面の荷重の均衡をアイソスタシー(地殻均衡)といいますが、氷床が融解すると海水量が増えて海洋底への荷重が加わり、マントルはアイソスタシーを保とうとしてゆっくりと変形します。その結果あらわれたのが、縄文時代の海岸線です。
氷が融けると単純に海水面が上昇するわけではないようですね。地球システムの複雑さがよく解ります。

20世紀の気候再現実験によると、1930年代の気温上昇は自然要因のみで説明できるが、近年の地球温暖化は自然要因に加えて人為要因を考慮しないと再現できないそうです。
更新世末(約1万年前)の生物大量絶滅が、気候変動のせいなのか人類も関与しているのかは結論が出ていませんが、現在進行中の「2度目の大量絶滅」は明らかに人類の活動が影響しています。
地球というシステムは非常に複雑で、地球環境の未来予測は不確実です。
だからといって何も対策をしなければ、地球環境は取り返しのつかない状況に陥るでしょう。
第四紀の環境の変化は、人類の活動を無視して語ることはできません。

本書は地球温暖化問題のみならず、森林資源の利用や宅地開発に関する章もあり、環境問題に対する幅広い関心に応える一冊となっています。
特に国立公園上高地(長野県)に対する提言は、公共事業のありかたについて考えさせてくれるものでした。

(8月6日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
不確かな真実
不確かな真実U


ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:45| Comment(37) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月30日

ニホンオオカミの行方

世界には未知なる動物の目撃情報が数多くあります。何億年も前に絶滅したと考えられていた古代魚シーラカンスの発見は、世界を驚かせました。

1905年に奈良県東吉野村で捕獲されたのを最後に、絶滅したことになっているニホンオオカミ(1910年に福井県の福井城址で捕獲されたイヌ科の動物が、ニホンオオカミだったとの説もあり)。しかしその後も、紀伊半島・奥秩父・祖母山系などでオオカミの目撃談は絶えません。
2000年、野生動物保護学会で九州・祖母山系で撮影されたニホンオオカミと思われる動物の写真が発表され、新聞報道もされました。報道の過熱を懸念し、その後の発表を控えてきたという発見者の西田智さんが、これまでの経緯を著書をまとめました。



高校の英語教師だった西田さんは、大学生時代に専門の英語はそっちのけで野鳥の研究に没頭し、野山を駆け巡っていました。ある夜、祖母山でオオカミの遠吠えのような啼き声を聞きます。山小屋の管理人が言うには、あれは山犬だと。
山犬とは、幻のニホンオオカミのことなのか。その後も西田さんはライフワークの野鳥観察の傍ら、声の主を追い続けます。

そして2000年7月、西田さんはオオカミらしきイヌ科の動物に出会うのです。
撮った写真を元国立科学博物館動物研究部長の今泉吉典博士に送り、「ニホンオオカミの特徴を備えており、ニホンオオカミそのものとしか思えない」との鑑定を得ます。一方で、ハスキー犬のようなオオカミに血統の近い犬が、野生化したのだろうとの反論も提出されました。
生きたニホンオオカミを見たことのある専門家は、誰ひとりいません。オオカミなのか野犬なのか、写真だけでは結論が出ないようです。

サル・シカ・イノシシなどによる農作物への被害があとを絶たないのは、山林の荒廃によるエサ不足に加えて、食物連鎖の頂点にいたオオカミが絶滅したからだとも考えられています。
そこで森にタイリクオオカミを放し、日本にオオカミを復活させようとする計画があるそうです。日本に本来存在しない生物を持ち込むわけではありませんが、外来種の人為的な導入には生態系を乱す懸念もあります。
日本へのオオカミ再導入を目論む日本オオカミ協会丸山直樹教授は、西田さんの写真を否定する側(悪役?)として本書に登場します。

写真の真偽をめぐって果てしない論争をするよりも、この本が(もしかしたらまだオオカミが生きているかもしれない)日本の豊かな森林の保護を考える契機になるといいですね。西田さんは、九州地方では絶滅したとされるツキノワグマらしき足跡も発見しています。
山との出会い、オオカミ探索の日々、マスコミとの応酬、そして全国でオオカミを探し求める同志たちとの交流…本書はノンフィクション文学としても楽しめます。

『ニホンオオカミは生きている』への意見・感想は…オオカミ党

(7月30日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 21:17| Comment(14) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月16日

やっぱり宇宙は面白い

本を読むという行為は、人の意識を別世界へと誘います。
特に宇宙がテーマの本は、スケールが大きくて妄想をもてあそぶのにもってこいです(笑)
当blogではたびたび宇宙本を紹介してきましたが、ブルーバックス桜井邦朋氏の新刊が出たので読んでみました。
桜井氏は宇宙物理学、特に太陽の専門家で太陽活動と気候変動の関連を指摘しています。また宇宙における人間の存在意義について言及したり、大学の裏側を暴露したりと多彩な著作で知られる面白い研究者です。



宇宙物理学入門


タイトルが物理学ですから、おカタい内容です。それでも160ページほどのコンパクトな体裁なので、気軽に読める入門書です。
宇宙全般を取り扱っていますが、特に星(恒星)ついて多くが割かれています。宇宙論については最終章にまとめられています。

太陽では、水素ヘリウムに変化する熱核融合反応が起こっています。
太陽ほどの大きさの星は、中心核の水素がヘリウムに変換され尽くすと膨張し赤色巨星となります。続いて脈動変光星惑星状星雲へと姿を変え、最後は白色矮星となってその生涯を終えるのです。白色矮星は太陽と同程度の質量を持つのに半径は地球程度しかない、非常に高密度の天体です。
太陽の8倍よりも質量の大きな星の最期は、超新星と呼ばれる大爆発を起こし、中性子星へと姿を変えます。中性子星は質量は太陽程度なのに半径は10qほどしかなく、その密度は1立方センチメートルあたり1億トンという想像を絶するものです。
さらに太陽よりも40倍以上質量の大きい星は、ブラックホールになると考えられています。

地球上から望遠鏡で観測できる宇宙の姿には限界があります。宇宙論の飛躍的な発展は電波天文学のおかげです。NASAの探査機WMAPによって、これまで120〜200億年と考えられていた宇宙の年齢が137億年(±2億年)であると明らかになりました。
それでも宇宙には、まだまだ謎が多く残されています。
あとがきによると、太陽や地球になぜ磁場があるのかは未解決の問題なんだそうです。

(7月15日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 01:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月03日

不確かな真実U

地球温暖化の危機が叫ばれる、現在。
北極や南極の氷がなくなるとか、太平洋の島国は海に沈むとか、センセーショナルな話題が先行しがちですが、真実はどうなっているのでしょうか。
地球温暖化問題を冷静に考えるには、現場の科学者がどう捉えているのかを調べてみることです。以前、『北極圏のサイエンス』をご紹介しましたが、今回は世界の最高峰・ヒマラヤからの報告です。



ヒマラヤと地球温暖化 中尾正義 著

ヒマラヤでは、実際に氷河の減退が観測されています。
ネパールの首都カトマンズでも、1960年代以降気温が上昇傾向にあります。ただし、これが地球規模の気候変動の影響であるとは言えません。都市化が進むカトマンズでは、ヒートアイランド現象であると見るのが妥当です。
ではヒマラヤの山岳地帯ではどうかというと、1970年代以降、地球規模の温暖化に同期するように気温の上昇傾向が見られます。氷河の融解も、気温上昇が促進している可能性は大きいようです。しかしヒマラヤでの温暖化の速度は、世界の他の地域(北半球の平均温暖化速度)よりもいくぶん緩やかです。

実はヒマラヤの氷河を融解させる大きな要因が、もうひとつあります。ヒマラヤの氷河には黒く汚れた部分があるのですが、これは氷上に生息する生物たちが生み出した有機物クリオコナイトです。これが氷河の融解を促進していたのです。生物が地球環境の変化に及ぼす影響の大きさを示す一例ですね。

氷河には冬雪型夏雪型があります。冬に降水量が多い地域では、冬の積雪で氷河が成長します。ヒマラヤの氷河は夏雪型です。しかし夏の雪は、ほんのわずかな気温の上昇で雨に変わります。夏雪型氷河は、地球温暖化に弱いのです。
ヒマラヤの氷河の衰退がすべて気温上昇によるものではないのですが、氷河の盛衰は気候の変化を鋭敏に反映する、地球環境のバロメーターであるといえます。

(4月30日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】 不確かな真実

さて、地球温暖化に関連して気になるニュースが。4月27日から始まったバイオガソリンの販売です。

管理人のひとりごと
ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:39| Comment(13) | TrackBack(4) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月12日

不確かな真実

今世紀末に地球の平均気温が最大で6.4℃上昇する
2月1日、パリで開催された国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、このような報告書をまとめました。
地球の平均気温と大気中の二酸化炭素濃度は現在上昇傾向にあり、これが地球温暖化論の根拠となっています。
地球が温暖化すると、その影響が最も大きく現れるのは極地です。北極圏研究の第一人者は、地球温暖化問題をどう考えているのでしょうか。



北極圏のサイエンス

赤祖父俊一氏は、アラスカ大学にある国際北極圏研究センターの所長です。
アラスカは厳寒の地というイメージが強いのですが、夏の気温はなんと30℃を超えます。
本書のサブタイトルは「オーロラ、地球温暖化の謎に迫る」です。

北極圏の最も美しい自然現象は、なんと言ってもオーロラでしょう。
オーロラの光は緑白色が酸素、ピンク色が窒素の発する色です(酸素は暗赤色の光となることもあります)。
オーロラは、地球に磁場があるために発生します。地球と同様に磁場のある木星や土星でも、オーロラは観測されます。火星・金星には磁場がないためオーロラは発生しません。また水星には磁場があるのですが、大気が無いためオーロラは発生しないのです。

北極圏に、地球温暖化の決定的な証拠はあるのでしょうか。
永久凍土に建てられた住宅が傾くのは、温暖化によって凍土が融けたからではありません。凍土に直接家を建てると、暖房の熱で凍土が融けて家が傾き、数年で住めなくなります。永久凍土上で暮らすには、柱を立てて床と地面の間を空けなければならないのです。
氷河の後退こそ、地球温暖化の証だという意見があります。しかし北極圏の氷河の後退は17世紀から始まっており、逆に最近になって急に前進を始めた氷河もあるのです。また、氷河は数千年の気候変動とともにあり、ここ数十年の気温の変化を反映するものではありません。

過去100年間で、地球の平均気温は0.6℃上昇しています。
その間1940年から1970年までの気温は逆に降下しており、その後再び急上昇し現在に至っています。
1940年からの気温低下の原因は未だはっきりしておらず、かつては地球は氷河期に向かっているとの意見が主流でした。寒冷化は、人類にとって温暖化以上の脅威です。寒冷化による凶作は、地球規模の大飢饉を招きます(温暖化は農作物の収穫にはプラスです)。

現在の気温上昇のうち、どこまでが自然変動でどこからが人間の文明活動に起因するのか、実は全くわかっていないのだそうです。
気温の上昇によって、海洋中の二酸化炭素や永久凍土に封じ込められたメタンガスが大気中に放出され、温暖化が加速されたのかもしれません。
過去100年間の気温上昇のうち、0.2℃は太陽の活動の影響だとする計算もあります(すると人為要因による上昇は0.4℃)。だからといって、人間の文明活動が環境に与えている影響は無視できません。

本書はサイエンスと銘打っていますが、アラスカでの生活や北極圏探検史も交え、たいへん易しい本に仕上がっています(ただ、複数の連載をまとめたために、各章に重複した話題が多いです)。
美しいカラー写真も豊富で、地球の神秘に触れたい人にはオススメです。
地球温暖化についてじっくりと考えてみたい方も、是非!

(2月12日読了)
ラベル:地球温暖化
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:51| Comment(50) | TrackBack(1) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月22日

カラダは世界遺産

突然ですが、盲腸虫垂の違いはご存知ですか?
小腸と大腸がつながるT字路のような部分。一方は大腸となり、もう一方はすぐに行き止まりとなります。この行き止まりの部分が盲腸です。虫垂とは、盲腸の先にぶら下がった細長い器官のことをいいます。


「退化」の進化学



犬塚 則久著



「退化」の進化学とは、なんとも魅力的なタイトルです。
人体の退化した部分というと、真っ先に思い浮かぶのが盲腸・虫垂ですよね。
草食動物の盲腸が長いことは、よく知られています。植物の硬いセルロース性の細胞壁を消化するために、バクテリアを住まわせているからです。肉食動物の盲腸は、小さいか全くありません。
一方の虫垂ですが、こちらは多くの哺乳類にはなく、ネズミやネコ、ヒトなどの霊長類に限られます。
俗に言う「盲腸」…虫垂炎になると虫垂を切除しますから、虫垂は役に立たない退化した器官の代名詞とされてきました。ところが実際には虫垂はリンパ小節が密集しており、むしろ類人猿とヒトに特有の、生物進化のうえでは新しい免疫機構だったのです。

私たちのカラダには、進化の足跡が数多くあります。
例えば耳。
耳には3つの小さな骨があって、私たちは音を聴くことができます。両生類と爬虫類では耳の骨は1つで、あとの2つは顎の関節を構成しています。
また、これらの骨は、サメでは顎の骨そのものです。そして耳の穴は魚類のエラの穴に由来し、私たちの首は魚類のエラ蓋があった場所ということになります。
このblogで何度か採り上げたNHKスペシャル・恐竜VSほ乳類でも、爬虫類の顎の骨の一部が哺乳類の耳の骨になり、哺乳類は聴覚を発達させて夜の世界に進出することで、昼の世界を支配する恐竜との棲み分けをはかって進化したとの説を紹介していました。

無から有が生まれないように、人体の器官はすべて、魚類や爬虫類や他の哺乳類から受け継がれています。
私たちのカラダそのものが、生命が何億年ものあいだ進化を続けてきた何よりの証拠なのです。
著者・犬塚氏は言います。私たち自身が世界遺産であると。

(1月21日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 15:28| Comment(2) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月02日

スパモン様の見えざる手

この世は5分前に何者かによって作られた、過去の記憶や太古の化石・遺跡とともに…
そう言われると明確に否定することはできません。

宇宙はビッグバンによって誕生し、生命は進化を続けて今のような姿となりました。
一方で、世界は聖書に記されている通り神様がお作りになったのだと信じる、キリスト教原理主義ファンダメンタリズム)があります。アメリカでは、ファンダメンタリストが進化論とともに創造説を学校で教えよと主張しています。
ただ、創造主がキリスト教の神だと教えるのでは政教分離に抵触するので、最近では何らかの知的な存在(もちろん、キリスト教の神を想定)が世界を創造したのだとするインテリジェント・デザインID)説というのが登場しています。


反★進化論講座



ボビー・ヘンダーソン著 / 片岡 夏実訳


古代人の平均身長は、なぜ現代人より低いのか?
地球には重力があるが、そのパワーの源泉は現代科学でもよくわかっていない。実は目に見えないモンスターが、人間が宇宙へ飛び出さないように、スパゲッティのような細長い無数の触手で人間の頭を押さえているのだ。しかし、現在の地球の人口は古代とは比べものにならないくらい増加したので、モンスターの触手の押さえる力が弱くなっている。だから身長が伸びた。
世界の創造主はスパゲッティ・モンスターである。
ダーウィン進化論やニュートン力学が全てを説明できないように、ID説も仮説に過ぎない。ID説を学校で教えよと言うのなら、同様に空飛ぶスパゲッティ・モンスター説も教えられなければならない。

この『反☆進化論講座』は、進化論を否定するために書かれた本ではありません。
進化論を否定するID説に対抗するために、ID説の理屈をそのまま使って立ち上げた新宗教の福音書(?)なのです。

かつて病気は悪霊の仕業で、患者から悪い血を抜けば病気が治ると信じられていた。これが現代医学よりも効果がないと言えるだろうか。悪い血を抜いたおかげで悪霊は撲滅されたのだ…
オカシイと思いつつも、反証しようのない論理。カルト宗教は、このような手口であなたに近づいてくるのかもしれません。
カバーの折り返しには、こんな一文があります。
本書を楽しく読み進めれば、
知らず知らずのうちに、
アブナイ宗教や、
もっともらしいトンデモ科学の
手口にだまされない能力が、
身につく!

2007年、皆様によき笑いがありますように!

↓スパモン様のお姿をご覧になりたい方はこちら
http://www.venganza.org/

(1月1日読了)
管理人のひとりごと
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 11:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月30日

ムシの眼から見る世界

地球上で最も種類の多い生物、昆虫。数十万種と百万種以上とも言われ、未発見の種は既知の種よりも多いと推測されます。日本では約3万種が報告されていますが、実際には10万種以上いるだろうとのことです。


タイトルがイイですね〜
灯りに集まる夜の虫のように、引き寄せられてしまいます。
夜の風景のなかでもとりわけ明るいコンビニエンスストアの照明には、多くの昆虫たちが集まってきます(昆虫は紫外線付近の波長に誘引される)。そして珍しい虫を求めて昆虫採集マニアも集まってきます。昆虫にとってコンビニとは、そんな場所なんですね。
しかし、コンビニの電撃殺虫器が周辺の虫たちを絶滅させることはないですし、昆虫マニアに捕獲される虫よりも、走っている車に衝突して命を落とす虫の方が多いでしょう。都市開発による環境変化は、さらに多くの昆虫たちの棲み処を奪います。

この本は上記のコンビニをはじめ「昆虫にとって○○とは何か?」と28のテーマを採り上げて、昆虫(生物)と人間(文明)の関係を考察するものです。
他にも「昆虫にとってビールとは何か?」では、カやアブなどの吸血性昆虫は人体が発する二酸化炭素や汗に誘引されており、アルコールは二酸化炭素の排出や発汗を促進するために、酒飲みはカに刺されやすいとの事例を紹介しています。

文明の発達は、昆虫の生存に大きな変化をもたらしています。単なる自然破壊の問題だけではありません。自動車・船・飛行機などの輸送機関が、本来生息していなかった地へ昆虫たちを運んでいます。家屋や農地が、昆虫たちに新たな生息地をもたらす場合もあります。
自然保護というのも難しい問題です。著者は自然保護には大きく2つのタイプがあると言います。
ひとつは「このままではやばい」という、人間の危機感です。酸素を生み出し災害を防ぐ森林、飲み水となる河川、化石燃料などの天然資源…人間が生存する上で必要な自然環境を保護しようというものです。
もうひとつは、ノスタルジー感情にもとづく自然保護です。ゲンジボタルやオオムラサキの飛ぶ風景を守りたい、取り戻したい。しかし感情にもとづく自然保護は、見た目の美しい種類に偏る傾向があります。守るべき豊かな自然というのも、決して原生林に戻すことではなく、のどかな田園風景のように、人間の手の入った二次的な風景だったりします。

文明的な生活を維持しつつ豊かな自然を守るならば、人間は都市の高層住宅に住んだほうが良いでしょう。
農薬を使わずに見栄えの良い野菜や果物を作るならば、害虫が入ってこない栽培工場で育てるしかありません(ちなみに著者の専門は害虫防除です)。
人間と自然はどう関わるべきか、多くのことを考えさせてくれる一冊です。
文章は易しく各章は短く、非常に読みやすい!

(12月29日読了)
管理人のひとりごと
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 16:55| Comment(2) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月11日

氷の世界

地球温暖化という言葉を聞かない日はない、昨今。
地球の平均気温は、産業革命以降の人類の文明活動が排出した二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスによって、上昇しているといわれています。

地球の歴史は、温暖化と寒冷化を繰り返してきました。地球温暖化説が定着する前は、現代は氷河期と氷河期のあいだの間氷期であり、地球は寒冷化に向かっているというのが、むしろ定説でした。
これからするお話は、氷河期なんて生やさしいものではありません。かつて地球全体が(赤道直下も含めて!)氷の世界だった、というものです。

私のお気に入りスポットに、恐竜博物館があります。ここの売り物はもちろん、数々の恐竜の全身骨格標本ですが、地球や生命の歴史についての展示も充実しています。
今年の特別展示は、エディアカラ生物群でした。先カンブリア時代の、軟らかな体をもった生命体が岩石に残した、かすかな痕跡の化石です。
化石とともに、原初の地球の歴史を解説したパネルも展示されていました。そのなかにあったのが、太古の地球を襲った大異変・全地球凍結スノーボールアース説です。

スノーボール・アース



ガブリエル・ウォーカー著 / 川上 紳一監修 / 渡会 圭子訳



地球に最初の生命が誕生したのが、約30数億年前。以来、今日に至るまでその営みは連綿と受け継がれてきています。
しかし長い地球の歴史は、生命を一掃しかねない大絶滅を何度も経験しました。最近では、6500万年前に恐竜やアンモナイトが姿を消した、白亜紀末の大絶滅があります。

全地球凍結は、約7億年前に起こったとされています。
これまで地球は、灼熱の火の玉が徐々に冷えて現在の安定した気候になったと考えられていました。途中、一度でも地球が氷に閉ざされたとは想像だにできませんでした。
しかし、赤道直下を含む世界各地で見つかる氷河堆積物は、地球全体が氷に覆われていたことを示すものでした。
スノーボールアースの引き金は、二酸化炭素の減少だと考えられています。氷床は極地から次第に拡がり、氷床は太陽光線を反射することで、さらに寒冷化を進めます。当時、地球の大陸がひとつに集まっていたことも、氷床の拡大を助けました。
多くの生命は絶滅しましたが、海底火山の熱や氷の隙間から僅かに日光が届く場所で、生き永らえたものもいました。
やがて火山ガスにより、氷の世界は崩壊します。今度は短期間に大気は40度まで上昇したと考えられています。
この急激な環境変化が、生命の多様な進化のスイッチとなり、エディアカラの不思議な生き物たちを生み出したのかもしれません。
なお、地球全凍結はこのとき一度きりではなく、約20億年前にもあったといわれています。

スノーボールアースというアイデアを最初に思いついたのは、天才的なひらめきの持ち主であるが飽きっぽい、ジョー・カーシュヴィンク。そしてこの新説を世に知らしめたのは、マラソンランナーでもある激情家のポール・ホフマンです。
本書は科学解説書というよりは、スノーボールアースをめぐる地質学者たちの、小説のようなスリリングな物語です。科学書は苦手だという方にも、おすすめできます

(12月10日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:37| Comment(20) | TrackBack(2) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月05日

小さな小さな地球の覇者

カイアシ類という、聞き馴れない名前の生き物がいます。
漢字で書くと橈脚類。「橈=ボートを漕ぐオール」のような脚の生き物という意味です。
カイアシ類は甲殻類、つまりエビやカニの仲間です。その多くは1〜2oの大きさで、大きなものでも1cm程度。いわゆる動物プランクトンと呼ばれる生き物です。



カイアシ類は最もバイオマス(生物量)の多い生き物のひとつで、プランクトンの7〜8割を占めます。その生息域は熱帯から極地、水深10,000mの深海からヒマラヤの氷河まで、地球上のあらゆる水域に及びます(一部陸上種もあり)。
生命の本質は、子孫を殖やし生息領域を拡げる「はびこる」ことにあります。カイアシ類は、まさに生態系の小さな覇者です。人類のように複雑・高度化を目指す進化をタテの進化とするならば、小さくシンプルな体で多様化し生息範囲を拡げるカイアシ類の進化を、著者は水平進化と呼びます。

第一章ではカイアシ類を中心に、生命の進化全般について語られます。
エディアカラ生物群やカンブリア紀大爆発の生き物たち、最近話題の光スイッチ説(初期の生物が視覚を獲得したことで爆発的進化の引き金になったとする)も、わかりやすく解説されています。
生物の分布と大陸移動の関係(キーポイントは、かつてユーラシア大陸とインド亜大陸の間に存在したテーチス海)も、非常に面白いです。

第二章には、カイアシ類の実に多様な生態が紹介されています。動植物プランクトンなど微小な粒子を食する者がいれば、稚魚や他のカイアシ類を襲う肉食の者もいます。さらには巨大な眼を持つ深海性の者や、驚くことにヘビそっくりの毒牙を持つ者までいるのです。

第三章は、魚や貝など他の動物に寄生するカイアシ類の生態です。一方で、珪藻類や渦鞭毛藻類(赤潮の原因)などの植物に寄生されるカイアシ類もいます。

最後の第四章は、海洋生態系と地球環境問題です。外来種による在来種の駆逐、地球温暖化による環境変化が、生物多様性を失うことへの懸念が表明されています。
アジアで汲み上げられた船舶のバラスト水が、北米の海で排出され、在来のカイアシ類がアジア産に置き換わってしまった実例も紹介されています。

人類が宇宙へ飛ぶ時代になっても、まだまだ解明されていないことが多い、海。海洋生態系の多様性の喪失が、海のエネルギー循環に大きな変動をもたらす可能性は否定できません。
著者の研究対象への愛着のあまり、筆がすべっていると感じられる表現も多々ありますが、カイアシ類という微小生物を通して、生命の進化と生物の多様性について思考をめぐらすことができる良書であると思います。

(11月3日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
タフな奴ら。
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 自然科学交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。