2009年05月26日

205万円の衝撃(後編)

プリウスの最大のライバルは、フォルクスワーゲン・ゴルフではないでしょうか。
本書には、両者の比較記事も掲載されています。
奇しくもプリウスと同時期に新型となった“ゴルフY”は、小排気量エンジンを過給したTSIに、マニュアルミッションの効率とイージードライブを両立したDSGを組み合わせて、燃費と走行性能を向上させています。
フォルクスワーゲンは、クリーン・ディーゼルの「ブルーモーション」、ディーゼル・ハイブリッドの「ツインドライブ」も開発中です。21世紀のグローバルスタンダードカーは、プリウスかゴルフか。両者の進化に注目しましょう。



新型プリウスのすべて

新型プリウスのバッテリーは、エネルギー密度の高いリチウムイオン電池ではなく、従来同様ニッケル水素電池を採用しています。頻繁に充放電を繰り返すプリウスのシリーズ・パラレル・ハイブリッドには、ニッケル水素電池の方が適しているのです。
エンジンを発電機として使用し、モーターのみで駆動するシリーズ・ハイブリッドには、リチウムイオン電池が採用されるでしょう(もしかして、現行方式は今のプリウスで最後?)。
そしてモーターはエンジンのアシストに徹する、シンプルな構造のパラレル・ハイブリッドには、バッテリーよりもキャパシタの方が適しているのではないでしょうか。

プリウスばかりが注目されていますが、6月11日に発表されるマツダ・アクセラにはi-STOP(アイドリングストップ機構)が搭載されます。これまたインサイト効果か、価格は189万円から。2,000ccでこの価格なら、十分に競争力があると思います。スポーティな走りではプリウス、インサイトに負けないでしょう。
ハイブリッド車だけでなく、電気自動車・燃料電池車・クリーン・ディーゼル車など多様なエコカーが登場して、クルマの未来を面白くしてもらいたいものです。

エコカー減税、スクラップインセンティブなど、バラマキ経済対策は一時的な景気刺激にはなるでしょうが、それは需要を先食いするだけで、本質的な経済成長は望めません。
日本の自動車産業には、減税や補助金によるドーピングに頼らず、クルマそのものの魅力を高めることが求められています。

(5月21日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
205万円の衝撃(前編)
景気回復の救世主?(前編)
景気回復の救世主?(後編)
【3代目】新型プリウス発表
「トヨタショック」は超えられるか
イニシャルD
ハイブリッドは世界を制すか
未来予想図


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2009年05月25日

205万円の衝撃(前編)

5月18日に発売された3代目トヨタ・プリウスは、異例尽くめのデビューとなりました。
・設計変更による発売延期
・発表前にオフィシャル写真が流出
・さらに発表前に価格情報が流出
・発売前の車両を公共の場に展示
・トヨタ系全ディーラーでの販売
・旧モデルの装備を見直して継続販売
あまりにも詳細な情報が事前に判明していたため、発表時には新鮮味が感じられなかった新型プリウス。おなじみモーターファン別冊『すべてシリーズ』も、早々と書店に並びました。



新型プリウスのすべて

新型プリウスで最も注目を集めたのは、なんといっても価格です。
1,800ccへの排気量アップや装備の充実度から、価格上昇が予想されていた3代目プリウス。量産効果によるハイブリッドシステムのコストダウンによって、既存車種との価格差が縮まるとの報道もありましたが、205万円からの価格は予想をはるかに下回る衝撃的なものでした。これは明らかに、189万円からの低価格でハイブリッド車を普通のクルマにすると謳ったホンダ・インサイトへの対抗処置です。
新型プリウスのラインナップは、最廉価版「L」が205万円、量販グレードの「S」が220万円、上級仕様の「G」が245万円。おそらく当初は「L」の価格を220万円位で考えていたのではないでしょうか。

世界トップレベルの低燃費、大幅に向上した走行性能、ソーラーベンチレーションやLEDヘッドランプといった最先端装備、室内スペースの改善、そして累計100万台以上の販売実績。新型プリウスを開発したエンジニアたちは、自信満々で3代目を世に送り出したはずです。たとえ今より20万円高くても、太刀打ちできるクルマは存在しないでしょう。実際に新型プリウスの予約は絶好調で、発売日には受注が空前の8万台に達しました。
しかし経営陣の思いは違ったようです。燃費でも装備の充実度でも、旧型プリウスにすら及ばないインサイトを過度に恐れ、205万円という価格勝負に打って出ました。そのうえカタログには、インサイトに見立てたマイルドハイブリッド車との比較まで載せて、情けなくなってきます。こういった比較は普通、販促チラシレベルでやるものでは?
創業期以来の赤字が、世界一の自動車メーカーをここまで弱気にさせてしまったのでしょうか。

4月にはインサイトがハイブリッド車として初の販売台数1位を獲得し、フィットとともにホンダがワンツーフィニッシュを果たしました。ホンダディーラーでは、インサイトの集客力が他車の成約につながっているようです。
一方、もともと知名度の高いプリウスは指名買いが多く、他車への波及効果は限定的。しかもプリウスの戦略的な価格設定は、他のトヨタ車を割高に見せてしまいます。
逆境のなかでも黒字を確保したホンダに対し、過大な生産能力が重荷となって今年度も赤字が見込まれるトヨタ。
この勝負、プリウスvsインサイトはプリウスの勝ちトヨタvsホンダはホンダの勝ち、といったところでしょうか。

(続く)
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2009年03月02日

景気回復の救世主?(後編)

低価格を武器に、インサイトプリウスに真っ向勝負を挑むホンダ。
そこで多く聞かれるのが「インサイトは、プリウスにそっくり」との声…
どちらも5ドアハッチバックで、リアウインドー下部に後方視界を確保するエクストラウインドーが設置されているのも同じ。しかしこのリアビューは、ホンダが2代目CR-X、初代インサイトで既に採用していました。空力と実用性を両立するとなると、似たようなデザインになります。「どちらがマネしたのか?」という不毛な議論は止めましょう。



「新型インサイト」のすべて

200万円を切るハイブリッドカーを実現した、インサイトの功績は偉大です。
しかし全く価格帯の異なるプリウスとインサイトを比べて、どちらが優れているかと議論するのは意味がないと思います。
ハイテク装備を満載したプリウスは、ラージクラスからのダウンサイジング層をも満足させるでしょうし、コストパフォーマンスに優れたインサイトは、コンパクトクラスのユーザーを吸い上げるでしょう。5月18日にデビューする3代目プリウスは、1800ccにスケールアップするので、両者の棲み分けは一層ハッキリします。
インサイトの登場で打撃を受けるのは、プリウスよりもむしろカローラなのでは?

プリウスとインサイトは、ハイブリッドシステムも大きく異なります。
強力なモーターで電気自動車のような走行感覚を味わえるトヨタの『THS』に対し、エンジンが主体でモーターはアシストに徹するのがホンダの『IMA』です。
最新のインサイトのカタログ燃費は、6年前にデビューしたプリウスに及びません。しかし軽量かつ低コストなのは、IMAの大きなメリットです。
コンパクトなIMAは、スポーツカーへの搭載が期待されます。ハイブリッド・スポーツカーのCR-Zは、2010年までに市場へ投入される見通しです。

メディアは「プリウスvsインサイト」を煽り過ぎ、メーカーもお互いを意識し過ぎでしょう。
プリウス・ユーザーの私は、インサイトの登場によってハイブリッドカーの世界が広がることを歓迎します。
インサイトは魅力的ですが、6年経っても最新モデルと互角に勝負できる現行プリウスの商品力も驚異的です。

平成21年度予算の年度内成立が確実となり、4月以降に低燃費・低公害車を購入する方は、取得税と重量税の減免が受けられます(すでに購入された方も、車検時に重量税が減免されます)。
日本の自動車産業に景気回復は訪れるのか、大いに注目しましょう。

(2月26日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
景気回復の救世主?(前編)
【3代目】新型プリウス発表
「トヨタショック」は超えられるか
イニシャルD
ハイブリッドは世界を制すか
未来予想図
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2009年03月01日

景気回復の救世主?(前編)

昨年10−12月期のGDP(国内総生産)は前年比マイナス3.3%、年率換算では12.7%もの大幅な減少となりました。
金融危機のダメージが最も少ないはずの日本が、震源地のアメリカ以上に景気が急減速。その背景には、急激な円高による輸出産業の採算悪化がありますが、やたらと不況を煽るマスコミの存在も大きいと思います。
連日のように報じられる、トヨタやソニーなど日本を代表する製造業の業績不振。一方で、過去最高益を記録した任天堂やファーストリテイリング(ユニクロ)の扱いは小さく、円高のメリットに至っては、ほとんど報じられません。
これでは経済が萎縮しても仕方ないか…

とりわけ悪いニュースばかりなのが、自動車産業。
しかしフェラーリアウディのように過去最高の販売台数を記録したメーカーもあるのです。こうしたニュースを、どれだけの人が知っているのでしょうか?



「新型インサイト」のすべて

2月5日に発表(翌6日発売)された、ホンダのハイブリッド車『インサイト』が好調のようです。2月末での受注台数は、月販目標の3倍の1万5千台を突破する見通し。元旦の新聞に掲載された「ハイブリッドカーを、安く作れ。」の公約通り、インサイトは189万円からの低価格でデビューしました。
ホンダ初のハイブリッドカーとなった初代インサイトは、高価なアルミボディを採用した2シータークーペで、空力と軽量化を極めたスペシャルマシン。最終モデルは36km/gの低燃費を達成しましたが、販売台数はトヨタのプリウスに遠く及びませんでした。

2代目は絶対的な燃費性能よりも、徹底したコストダウンによってハイブリッド車を普及させることを狙っています。初代とは180°異なったコンセプトです。
コストパフォーマンスを最優先したインサイトのハイブリッドシステム(IMA)は、ベースとなったシビック・ハイブリッドのものよりも、モーターやバッテリーを小型化。そのため10・15モード燃費はプリウスの35.5km/g、シビック・ハイブリッドの31.0km/gに及ばない、30.0km/gにとどまっています。
それでも軽量なボディによって、実用燃費は遜色ないのだそうです。

インサイトは低価格を実現するために、コンポーネントの多くをコンパクトカーのフィットと共有しています。タイヤも省燃費仕様ではなく、フィットの標準銘柄と同じ。またスポーティな加速を実現するために、なんとファイナルレシオをシビック・ハイブリッドよりもローギヤ化(!)しています。エコカーでも、走りを犠牲にしないのがホンダ流。カタログ燃費を飾るためには、絶対にやらない手法です。
5ナンバーサイズにこだわったのも、インサイトの特徴。今どきドアハンドルがフラップ式なのは、グリップ式にして全幅が1.7mを超えるのを避けたからだとか。

本書には、新型インサイトのデザインモチーフとなった燃料電池車・FCXクラリティの試乗レポート、世界一の低燃費を達成した初代インサイトの記事も掲載されていて、お得です。

(続く)
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2008年05月19日

イニシャルD

1999年、東京都の石原慎太郎知事はディーゼル車が排出した煤を入れたペットボトルを振りかざしてテレビ出演。東京都の環境確保条例をきっかけに、ディーゼル車の排気ガス規制は大幅に強化されました。
石原知事の「脱ディーゼル」宣言以降、すっかり悪者とされてしまったディーゼルエンジン。国内メーカーからディーゼル乗用車は姿を消してしまいました。
(現在日本で新車購入できるのは、メルセデスベンツE320CDIのみ)



ディーゼルエンジンと自動車 鈴木孝 著

一方、ヨーロッパではディーゼルエンジンは環境対策の切り札とされ、新車販売の半数をディーゼル車が占めています。
ドイツの技術者ルドルフ・ディーゼルは、最も熱効率の高い仮想機関カルノーサイクルを目指し、ディーゼルエンジンを発明しました。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンよりも燃料消費(二酸化炭素排出量)が少ないのです。
排気ガスの浄化が難しいのがディーゼルエンジンの弱点でしたが、現在ではPM(粒子状物質)や有害物質の排出が大幅に削減され、低公害化が進んでいます。
最新のディーゼル車はスポーティでもあります。2006、2007年と2年連続でル・マン24時間レースを制したのは、V型12気筒ディーゼルエンジンを搭載したアウディR10でした。
鈍重で、ガラガラと大きな音を立てながら黒煙を撒き散らして走るディーゼル車のイメージは、過去のものとなったのです。

日本では、ハイブリッド車がエコカーの代名詞となっています。ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車は圧倒的な省燃費を誇り、ブランドイメージを大いに高めました。
しかしながら、エンジンとモーターを併用するハイブリッド車は、重量が増えて高コストとなります。高性能なモーターやバッテリーの製造には、レアメタルが欠かせません。
Well to Wheel(油井から車輪まで)という言葉がありますが、製造から廃棄までを含めたトータルでのエネルギー消費量や有害物質の排出量も評価する必要があるでしょう。
ディーゼルハイブリッドなら、ガソリンハイブリッドよりもさらに効率的です。

昨年はバイオエタノールが「カーボンニュートラル」であるとして注目を集めましたが、食糧からの転用は穀物市場の高騰を招きました。また、森林を伐採してバイオ燃料を製造するのでは、かえって環境を破壊しCO2排出を増やすだけです。
石油に代わる燃料としては天然ガス、GTL(ガス・ツー・リキッド)、BTL(バイオマス・ツー・リキッド)等が挙げられます。多様な燃料が使えるのもディーゼルエンジンの利点です。
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの利点を併せ持ったHCCI(予混合圧縮着火)エンジンの開発も、各メーカーが進めています。

本当は環境にやさしいDiesel
この記事を読んだ方が、認識を改めてくださることを願います。

(5月11日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
ハイブリッドは世界を制すか
未来予想図

【管理人・過去の交遊書】
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2007年12月16日

THE LEGEND IS REAL.(後編)

GT-Rの形式は、CBA-R35
ここで「新生GT-Rは、R34までのスカイラインの系譜を受け継いでいる」…と言いたいのではありません。注目したいのは「CBA」の方です。つまりGT-Rは、平成17年排出ガス基準よりも50%削減した低公害車なのです。時速200kmまで低公害性能を維持できるとされています。
高性能ターボ車でも低公害化は可能、これはGT-R以外にもターボ車が復活する可能性を示しています。近年フォルクスワーゲンが、小排気量エンジンにターボとスーパーチャージャーを付けて省燃費と高出力の両立を図っています。
VR38DETTエンジンには、V36スカイラインクーペVQ37VHRエンジンで初採用されたVVEL(ブイベル;バルブ作動角・リフト量連続可変システム)は搭載されていません。スロットルバルブを介さずに吸気バルブで吸入空気量を調節するVVELが備われば、燃費・排ガス性能がさらに向上し、21世紀のスーパーカーにより相応しいパワーユニットとなるでしょう。
GT-Rの今後の進化に期待します。



日産GT-Rのすべて

日産GT-Rをはじめ、世界の自動車メーカーからは最高時速300km超のスーパーカーが次々と発表されています。
東京モーターショー開幕日、ミツオカ(光岡自動車)は大手メーカーのスーパーカー開発競争に対し、「石油戦争を仕掛けている」(オロチのデザイナー・青木孝憲氏)と挑発的なスピーチをしました。21世紀のいま、スーパーカーと云えども環境性能を無視して地球の道を走ることはできません。
スーパーカーに燃費だなんて無粋なことを…と仰る方もいらっしゃるでしょう。しかし私は声を大にして言いたい、走りのクルマこそ燃費は重要です。レーシングカーは燃費が悪ければレースに勝てません。燃料タンクが大きくなれば重量増となりますし、給油ピット回数が増えてはレースに負けてしまいます。

GT-Rはクルマへの夢と憧れを取り戻してくれました。
世界第一級のスーパーカーが777万円とは、間違いなくバーゲン価格であります。しかし、誰にでも手が届くクルマではないことも事実です。
GT-Rに憧れる若者の受け皿がないのが、いまの日本車の現状。求められているのは21世紀のシルビアでありレビンではないでしょうか。今回のモーターショーのコンセプトカーには「これでは若者のクルマ離れも仕方ないか…」と思いたくなるものもありました。

日本からGT-Rが誕生したのは、本当に素晴らしいことです。
ただ、世界的な省エネルギーという課題があるからには、GT-Rを手放しで大絶賛するわけにはいきません(それでも480PSを発揮するGT-Rの10・15モード燃費は8.2km/Lであり、280PSだったR34GT-Rの8.1km/Lより改善されています。世界一省エネの300km/hカーでしょう)。
そういうわけで、私の第40回東京モーターショーのお気に入りは
@ホンダCR-Z(走りと燃費の両立を目指したハイブリッドスポーツカー)
A日産GT-R
BトヨタiQコンセプト(軽自動車よりも短い3mを切る全長で4人乗車を実現)
といたします。
技術面では、国内メーカーのクリーンディーゼルエンジンに期待が高まりました。
一方、海外メーカーが積極的にハイブリッド攻勢を仕掛けてきたのも気になります(国内メーカー、大丈夫?)。そして今後最も注目したいのは、HCCI(予混合圧縮自己着火)エンジン開発の動向です。

(12月10日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
THE LEGEND IS REAL. 前編
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:31| Comment(0) | TrackBack(7) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月14日

THE LEGEND IS REAL.(前編)

ようやく書けます…
すでに数多くのBlogで語られてきたであろう、NISSAN GT-R

基本的に何か読まない限り更新しないのが『不純文學交遊録』です(笑)
ニューモデル速報『GT-Rのすべて』を購入しましたので、遅ればせながらGT-Rをめぐって思索してみました。



日産GT-Rのすべて

自動車の国内販売が低迷し、若者のクルマ離れが叫ばれるなか開催された、第40回東京モーターショー。入場者数は前回(151万2100人)に及ばない142万5800人に終わりました。
しかし、連日圧倒的な人気を集めていた一台があります。
THE LEGEND IS REAL. 5年ぶりに復活したGT-Rです。

GT-Rがトランスアクスルを採用するとの情報は、かなり早くから自動車雑誌に報道されていました。フロントエンジンでありながらトランスミッションを後輪の直前に置くトランスアクスルは、前後の重量配分を均等にすることが出来るレイアウトです。
ここで私は疑問が沸きました。
GT-Rといえば4WD。トランスアクスルで4WDを成立させるには、同じ長さのプロペラシャフトが並行して2本走ることになります。これではかなり複雑で、重量面でも不利になると予想されました。もしかして「次期GT-RはFR?」かと思ったり。

ところが実際のGT-Rは、非常に合理的なメカニズムだと知って驚きました。
トランスアクスルの採用で、エンジンの直後に大きなトランスミッションが無くなりました。その結果、エンジンルームに入った空気をスムーズに流すことができるようになり、冷却性能が向上。さらにフロア下に流れた空気は、ダウンフォースを発生します。また、前席の足元が広くなったことでペダルレイアウトの自由度も高まりました。
GT-Rの真髄は、480PSを発生するVR38DETT型ツインターボエンジンでも4WDシステムでもなく、このPMプレミアム・ミッドシップパッケージにこそあったのです。

エクステリア・デザインは、スカイライン時代のGT-Rほどではありませんが、メカニカルな武骨さを感じさせるもの。美しさではスカイラインクーペに敵わないでしょう。しかしCD値0.27と知ってからは、空力の裏付けがあるデザインということで納得させられました。
迫力のあるエクステリアに対して、インテリアにはもっと華やかさが欲しいところ。インテリアに新しさがないことはデザイナー自身が認めており、そのぶん機能性には自信があると語っています。ちなみに「Black edition」の内装色は、欧州市場からの要望のようです。
ボディカラーは全6色ですが、これもオーナーにとっては物足りないところでしょうか。R34のイメージカラーだったベイサイドブルーや、ミッドナイトパープル、ライトニングイエローも似合うと思います。
エンジンルームの見映えはいいですね。最近はどんな高性能車でもプラスチックのカバーで覆われていてツマラナイのですが、GT-Rはエンジン本体のメカニカルな存在を主張しています。

乗り手を選ぶことなく、あらゆる路面条件下で圧倒的な性能を発揮する、マルチパフォーマンス・スーパーカーR35GT-R。時速300kmでも同乗者と会話しながら巡航できるといいます。
GT-R開発の指揮を執ったのは水野和敏氏。ルマン24時間レース参戦をはじめ、レーシングカーの開発に携わってきました。実は水野氏、役員からのGT-R開発指令を一旦断っているのです。その理由については是非とも本書のインタビューをお読みください。水野氏の描く理想のクルマ像が伝わってきます。
つづく

【不純文學交遊録・過去記事】
ときめきを、再び。
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:54| Comment(0) | TrackBack(1) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月01日

未知への挑戦、50年。

1957年10月4日、人類初の人工衛星スプートニク1号がソビエト連邦によって打ち上げられました。
人類による宇宙開発がスタートして、まもなく50年になります。

私の記憶にある最も古い読書体験のひとつは、あかね書房から発行された「少年少女20世紀の記録」シリーズの第1巻『地球は青かった』です。言うまでもなく人類最初の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンの物語であります(同書には、初期の宇宙ロケット開発物語も併録されていました)。
小学生の頃は、ヴォイジャー1・2号による木星と土星の探査成果のテレビ中継に、連夜夢中になりました。木星にも輪があったり、新しい衛星が次々と見つかったりと、驚きの連続でした。
松井孝典氏が進行役を務めた『パノラマ太陽系』は再放送まで繰り返し見たお気に入り番組でしたし、故カール・セーガン氏が出演した『コスモス』も見た記憶があります。
そして1981年には、宇宙と地球を何度も往復できるスペースシャトルが初飛行に成功。鉛筆みたいなロケットの先端に飛行士が押し込められていたのが、飛行機のように滑空して地球に戻って来れるようになったのです。翼を持ったオービターの姿は、未来の象徴のように思えました。
またあの頃には、原子力炉を搭載した旧ソ連の衛星コスモス954号、アメリカの宇宙実験室スカイラブが地球に落下する騒動もありました。



宇宙開発の50年

人類の宇宙への挑戦を一冊にまとめたこの本には、歴史に残る人工衛星や探査機が100余り登場。華々しい成果を挙げたものもあれば、無残な失敗作も少なからずあります。
宇宙旅行の時代を身近に感じさせてくれたスペースシャトルについても「使い捨てロケットの有用性は今日でも失われておらず、コストもリスクも高すぎる」として、本書の評価は冷ややかです。

小学生の頃には、20世紀中に人類が火星に到達する未来予測もありましたが、実現するのは随分先のことになりそうですね。
人類が月面の地を踏んだのは、1972年のアポロ17号が最後となっています。
今年9月14日、日本の月探査衛星かぐや(SELENE)が打ち上げられました。12月には観測が始まります。かぐやがもたらす新発見に大いに期待しましょう!

(9月30日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】
やっぱり宇宙は面白い
スーパースターBest20
2005年は宇宙の年

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2007年07月15日

時速100kmで衝突したら…

物理学…この三文字を見るだけで、いかにも難しそう。
そんな物理学の世界を、私たちの身近な存在であるクルマのメカニズムから解説しようというユニークな本が出ました。



クルマでわかる物理学

クルマの走る・曲がる・止まるから運動法則、エンジンから熱力学の法則を学ぼうという主旨ですが、クルマの話はあくまで「掴み」。物理現象やクルマのメカニズム用語の解説もそこそこに、いきなり数式のオンパレード。
表紙のうたい文句は「大学生から技術者まで楽しく学べる物理の教科書」
…素人向けの本ではないですね(笑)
それでも各章末のコラムが面白くて、数式なんて全く解らない文系人間でも(クルマ好きなら)読んで損はありません。

著者・古川修(ふるかわよしみ)氏は、元ホンダのエンジニア。4WS(四輪操舵)や二足歩行ロボットなどの革新技術開発の責任者を歴任してきました。
一般に作業着は汚れの目立たない色にしますが、ホンダの作業着は白。あえて汚れの目立つ色にして、整理整頓に気を使うようにしているそうです。こんなウラ話もコラムで読めます。

日本の自動車アセスメント(JNCAP)での、正面衝突における胸部障害値の基準は60G以下。衝突速度が時速50qでは、車体の衝突エネルギーの吸収ストロークは33cm必要になります。衝突速度が時速100kmになると1m31pも必要です。このような空間を車内にとることは不可能なので、いくら最新の安全ボディをまとったクルマでも、時速100kmで衝突したら助かりようがありません。
みなさん、安全運転を心がけましょう!

(7月15日読了)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 22:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月21日

誰かが世界を終わらせる?

戦争やテロ
未知なるウイルスの流行
地球規模の環境異変…
人類を滅亡に導く危機について警鐘を鳴らす書物は数多くありますが、今回ご紹介する本の特色は、国家間の戦争や地球環境問題ではなく個人が世界を滅ぼす可能性を指摘していることです。



今世紀で人類は終わる?

個人が世界を終わらせる可能性のひとつとして、まず挙げられるのが核を使ったテロです。プルトニウムを爆発させるには爆縮という特殊な技術が不可欠でテロリストの手に負えるものではありませんが、濃縮ウラン型爆弾なら核テロは比較的容易です。ソ連崩壊のドサクサの折、杜撰に管理された核兵器がチェチェン反政府勢力などに流出しているかもしれません。

本書で最も危険度が高いとされているのが、バイオテロです。生物・化学兵器の製造を監視するのは核兵器よりもはるかに困難であり、ウラン濃縮のような高度な技術も必要ありません。バイオテロを引き起こすのには国家どころか大規模なテロ組織すら必要ではなく、社会に憎悪を抱くマニアックな個人が世界を恐怖に陥れることができます。
狂った研究者が強力なウイルスを合成するばかりでなく、研究所に保管された天然痘ウイルスが持ち出される危険もあります。故意のバイオテロではなくとも、研究室でのバイオエラーも同様です。バイオテロ・バイオエラーは、たとえ犠牲者を出さなくても社会に深刻なパニックをもたらすことでしょう。

さらにSFじみた話ですが、粒子加速器で原子同士を衝突させる実験がビッグバンを起こし、地球どころか宇宙を破壊してしまう可能性を論じている科学者もいらっしゃるそうです。

著者のマーティン・リース教授は、イギリスの高名な宇宙物理学者です。衝撃的なタイトル(原題は『Our Final Century?』)が付いていますが、最先端の科学がもたらす人類の危機ばかりではなく、未来への展望(人類の宇宙への進出)も述べられています。ただし人類が繁栄を維持するためには、今世紀をどう生きるかが大切であると。

この広大な宇宙で、生命の存在が確認されているのは私たちの地球だけです。
人類は、地球は、いつまで続くのでしょうか。確かに言えることは、数十億年後には地球は膨張する太陽に飲み込まれてしまうことです。生命の誕生が、40億年前の地球で起こった宇宙の歴史上たった一度きりの出来事ならば、地球の消滅とともに宇宙から生命の存在は消えてしまいます。
もしかしたら人類に課せられた使命は、地球に誕生した生命の種を宇宙へ蒔くことかもしれません。そうすれば数億年先には、地球以外の星にも生態系が生まれているかもしれません。
それとも地球以外の星に生命の種を蒔く行為は、宇宙環境の破壊でしょうか?(笑)

(5月20日読了)

【不純文學交遊録・過去記事】世界はこうして終わる?
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:52| Comment(6) | TrackBack(0) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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