2011年06月13日

もし不純なリバタリアンがサンデルの『Justice』を読んだら

昨年、名門ハーバード大学で史上最多の履修者数を誇るマイケル・サンデルの政治哲学講義「Justice」が、NHK教育テレビで『ハーバード白熱教室』として放映され、彼の著書『これからの正義の話をしよう』はベストセラーとなりました。
教授が一方的に講釈を垂れるのではなく、学生が積極的に自らの意見を述べて参加するのが白熱教室の魅力ですが、日本の大学に議論する場がないわけではありません。ただ、サンデル教授の「君、名前は?」には痺れました。あれは上手いですね。



ベストセラーには手を出すまいと思いつつも、やはり買ってしまいました(笑)
売れているだけあって、読みやすい本です。ジェレミー・ベンサムの功利主義、イマヌエル・カントの定言命法、アリストテレスの目的因(テロス)などが、現代社会での実例を挙げながら解りやすく紹介されています。数千年の哲学史をファンタジーの手法で紐解いたヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』が思い出されます。本書で一番難解なのは、帯に書かれた宮台真司の推薦文でしょう(笑)
サンデルはコミュニタリアンであり、最大多数の幸福を追求する功利主義や、個人の自由な選択を尊重するリバタリアニズムを批判します。サンデルの支持する正義とは、美徳を涵養し共通善について判断することです。では「共通善」とは何なのかとなると、残念ながら本書から具体的な回答は得られません…
また、サンデルが言及するコミュニティへの連帯や責務には、アメリカの「テロとの戦い」を正当化するための危うさが感じられることも付け加えておきます。

自己決定を尊重するリバタリアニズムに共感する私には、自分の身体や人格の所有者は自分自身ではないとするサンデルの主張は、到底受け容れられません。他人の自由を侵害しない範囲で個人の選択の自由を最大化すべしとするリバタリアニズムは、自殺をも愚行権として認めます。人間は社会的生物であり、共同体と不可分には生きていけません。だからこそ自己の身体と精神は、残された「自由の最後の砦」なのです。
私は個人の心情・信条としてはリバタリアンですが、現実の社会制度としては富の再分配は必要だと考えます。市場における勝者は敗者を踏み台にして利益を得ているのであり、格差が拡大し過ぎては市場から競争する活力が失われる可能性もあります。リバタリアニズムとは、必ずしもアナーキズムと同義ではないのです。国家も法律も全く不要だと考えるリバタリアンは、ごく少数でしょう。

リバタリアンが尊重する「自由な個人」なんて、近代社会が生んだ妄想に過ぎないのかもしれません。同様にコミュニタリアンの掲げる「共通善」も、全人類が共有しうる普遍的なものとは限りません。
現代社会は世界各国が貿易や情報ネットワークで密接につながり、科学技術は脳死からの臓器移植や代理母出産をも可能としました。複雑に利害が絡み合った多種多様な「善」を調整するのが、市場であったり、法廷であったり、伝統的な集合知であったりするわけです。アテネの市民社会のことだけを考えていれば良かったアリストテレスの時代とは違います。
人間には自由意志があり、有史以来、自然界にはなかったモノや制度を生み出してきました。野生動物のように、遺伝子にプログラミングされた本能と自然界のルールという「共通善」に従って生きていけば良いだけなら、何の問題もありません。動物の世界だって、そう単純ではないかもしれませんが(笑)

(5月4日読了)★★★★


posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:53| Comment(2) | TrackBack(0) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月16日

原子力に未来はあるか

5月6日、菅直人総理大臣は中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の運転停止を要請し、14日には全ての原子炉が運転を停止しました。東海地震の予想震源域に立地し、活断層に囲まれていることから「世界一危険な原発」と揶揄する声もあった浜岡原発を止めたのは、菅総理の「英断」といえるでしょう。
福島第一原子力発電所の事故は津波による電源喪失が原因であり、原子炉自体は地震の揺れに耐えたとして、菅総理の要請に疑問を呈する声があります。しかし実際には、津波が到達する前に地震で損傷していたことが明らかになってきました。
先ほど菅総理の「英断」と書きましたが、唐突さは否めません。果たして総理に原発を止めた後の見通しはあるのか、甚だ心配です。ポスト・フクシマのエネルギー戦略を示すことが、政治の最大の責任であると思います。
また浜岡原発5号機は、外部冷却装置が故障しても原子炉自体が冷却を行う第3世代原子炉(ABWR)です。浜岡5号機がダメなら、日本にある原発のほとんど(第2世代原子炉)が危険ではないでしょうか。5号機は止めなくても良かったのでは。

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ポスト・フクシマの日本のエネルギー戦略はどうあるべきか。
そのものズバリなタイトルの本があったので読んでみました。

まず、石油はなくなりません。使われなくなるだけです。エネルギーの主役が石炭から石油に代わったのは、枯渇したからではなく、それまで使い道のなかった石油を使えるようにする技術が生まれたからでした(ただし石炭は今でも現役であり、息の長いエネルギーです)。
石油はあと30年でなくなると、30年以上前から言われ続けてきたのに一向になくならないのは、確認埋蔵量が増えたことに加えて、産油国や石油メジャーが価格を維持するために可採年数をコントロールしてきたからです。埋蔵量が多すぎると原油価格は下がりますし、少なすぎると消費国は石油に代わる資源を模索し始めます。2008年の原油価格高騰は、消費国の石油離れを加速させました。

化石燃料がなくなることはありませんが、地球温暖化問題もあってシェアは低下します。風力や太陽光などの再生可能エネルギーは、補完的なエネルギーに留まりそうです。また燃料電池は、天然ガスや電気から生産された水素を利用する技術であって、資源問題の解決にはなりません。そうなると次代を担うエネルギーは、原子力ということになります。
20世紀を大きく変えた石油文明を生み出したのは、19世紀に開発された科学技術でした。すると21世紀を変えるのは、20世紀に生まれた量子力学や相対性理論です。相対性理論から生まれた原子力は軍事面では世界を一変させましたが、原子力発電の他には医療分野で用いられるくらいで、日常生活を大きく変えるには至っていません。つまり原子力エネルギーによる本当の革命はこれからだというのです。
ドイツは再生可能エネルギーの利用率が高い国ですが、不足する電力は隣国フランスから購入しています。そしてフランスの電力は8割が原子力です。

当分の間は石油が枯渇する心配はなく、極端な原油価格の高騰もないのなら、なにも原子力にシフトせずとも石油をクリーンに使い続ける選択肢もありではないかと思いました。ただ、日本の石油需要は政情不安定な中東に依存し過ぎているので、石油よりも埋蔵量が豊富で地理的な偏在もなく、CO2排出量の少ない天然ガスにシフトするのが良いかと思います。
それでも私は、原子力というオプションは放棄すべきでないと考えます。研究を続けていれば現在よりも安全で低コストな原子炉が実現するかもしれませんし、たとえ国内の原発がゼロになっても技術を海外へ輸出することが出来ます。40年以上経過した原子炉は順次運転を停止し、その間に第4世代原子炉であるトリウム溶融塩炉の開発を進めてはどうでしょう。

本書の発行は2010年2月。今年3月の東北地方太平洋沖地震で起きた福島第一原発の事故は未だ収束には至らず、原子力をめぐる状況は一変しましたが、エネルギー問題の全体像を俯瞰するのに役立つ一冊です。
個々のエネルギーの技術的な評価のみならず、人類がエネルギーを使う仕組みを作る人々(石油メジャー・核不拡散体制・気候変動に関する政府間パネル)の存在についても一章を割いています。また地球温暖化には異論があること、京都議定書には問題点が多いことも指摘しており、バランスの取れた本であると好印象をもちました。本書を読んでから再生可能エネルギーや次世代の原子力発電など、個々のエネルギーについて調べると良いでしょう。
近ごろ話題のトリウム溶融塩炉は、本書でも有望視されています。

(5月1日読了)★★★★★
ラベル:エネルギー
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2011年05月04日

日本に平野はなかった

3月11日に起きた東方地方太平洋沖地震を受けて、この国のインフラやエネルギー政策はどうあるべきか、今年は国土観というテーマを掲げて書物と交遊したいと思っています。
国土というと、なんだか国家主義的で嫌だと感じる方は、日本列島と言い換えても良いでしょう。そう、日本列島のグランドデザインです。

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蹴裂(けさき)という見慣れない言葉に出会いました。
版元は建築・土木関連の書籍で知られる鹿島出版会。その名から察せられる通り、大手ゼネコン鹿島建設の関連会社です。土木工学と民俗学という異色のコラボレーション。

日本は、国土の約7割が山です。より細かく見ると、平地と水面と山地の比率(本書は国土のスリーサイズと呼ぶ)が「26:4:70」で、日本は水の豊かな国であることがわかります。さらに古代の日本は平地:水面:山地が「5:25:70」で、平地がほとんどなかったというのです。
氷河時代の地球は、気候が乾燥していました。一万数千年前に地球が温暖化すると、海面が上昇するとともに、雨が多く降るようになります。日本の平地は、かつて湖沼地帯でした。
激しい雨は山崩れや土砂崩れを引き起こし、水面を埋め立てて、現在見られる沖積平野となったのです。梅雨・豪雪・地震・津波・火山の噴火など、日本の国土は天災が生んだともいえます。

日本の湖沼を平野に変えたのは、自然現象ばかりではありません。蹴裂伝説とは、クマやカニやネズミといった野生の動物、ヤマトタケルのような神話の英雄が、山や岩場を蹴り裂いて水を流し、湖沼を平地に変えたという国土創成の物語です。
蹴裂伝説は、単に過去の天災を象徴的に語り継いだだけかもしれませんが、実際に古代の人々が行った土木工事だったとも考えられます。日本の平地が湖沼地だったのは遠い地質時代の出来事ではなく、蹴裂伝説は歴史上の事件だったのです。
日本列島の地質的な成り立ちばかりでなく、古代国家の成立過程をも解き明かそうという、学問の枠を超えた壮大な試み。発想が飛躍し過ぎでは、と感じられる記述も多々ありますが、文系読者も理系読者も楽しめる掘り出し物の一冊ではないでしょうか。

(4月29日読了)★★★★★
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月03日

うげらぽん!

これまでメフィスト賞作家を追いかけてきましたが、失礼ながら生理的に受け付けない作風の作家さんもいらっしゃいます。
例えば、やたらとルビを振った文章が目障りで、とても読むに堪えないのが古野まほろ。女子バレー部と書いて「じょしばれ」と読ませる「厨2」なセンスも、ちょっと…

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しかし、これなら読めそう。
「雪の山荘、謎めいた招待状、犯行予告、密室、ダイイング・メッセージ、名探偵など、本格ミステリのあらゆるガジェットを駆使」したという新作『群衆リドル』。出版社のキャッチコピーを読む限り、正統派のミステリではありませんか。

浪人生・渡辺夕佳のもとに、大日本帝国政府の迎賓館「夢路邸」で催される祝宴の招待状が届きます。差出人は外務省大臣官房儀典長の鳳林寿太郎。夢路邸の所有者でもあります。
祝宴に招待されたのは大学病院の医師に、その教え子である研究者、新聞社の科学論説委員、元警察官の探偵、消費者金融の支店長、そして京都の女子高校生。面識のある者同士もいますが、見事にバラバラの顔ぶれ。しかも彼らに送られた招待状は、すべて差出人が異なっていました。夕佳の招待主である鳳林もまた、外務省の部下によって招待された宴客のひとりに過ぎなかったのです。
探偵役は夕佳の先輩で、天才ピアニストの八重洲家康(これまた大層なお名前)。吹雪のなか、陸の孤島と化した迎賓館で起こるマザーグースに見立てた連続殺人。全く無関係に思われた被害者たちを、ひとつに結ぶものは何なのか。

副題は「Yの悲劇’93」となっていますが、エラリー・クイーンの作品を読んでいる必要はありません。
密室殺人のトリックや、登場人物をひとつに結ぶ事件は、かなりトンデモ。それでも普通に読めて普通に楽しめる作品ではないかと思います。
普通に読めるとは言っても、そこは古野先生。意味不明なセリフ多し。「うげらぽん」ってなに…(笑)

(4月18日読了)★★★★
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 文学・小説交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月02日

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり…

NHK大河ドラマ『江〜姫たちの戦国〜』は、上野樹里演じる江が本能寺の変の真相を明智光秀に問い質したり、織田信長の幽霊が現れたりと、かなりトンデモな設定が話題だそうです。
気が早いですが、来年の大河ドラマは『平清盛』(主演:松山ケンイチ)に決定しています。

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祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響あり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことはりをあらはす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の夢のごとし
たけき者も遂にはほろびぬ 偏に風の前の塵に同じ

有名な『平家物語』に書かれたように、武家として初めて太政大臣となり位人臣を極めた平清盛には、悪人とのイメージが定着しています。
後白河法皇を幽閉し、東大寺大仏を焼き払い、禿(かむろ)と呼ばれる少年スパイを都に放って政権批判を抑え込むなど、数々の悪行の報いで熱病(マラリア?)に倒れたとされる清盛。その4年後、栄華を誇った平氏一門は壇の浦で滅亡しました。
権力におごる暴君・清盛に対し、長男の重盛は『平家物語』で父を諌める賢人の役割を演じています。しかし実際には、重盛も結構あくどい事をやったようです(殿下乗合事件)。また「平家にあらずんば人にあらず」(此一門にあらざらむ人は皆人非人なるべし)と豪語したのは清盛ではなく、妻の時子の弟である平時忠でした。

歴史の常識を疑うのが好きな私は、平清盛をはじめ蘇我馬子・明智光秀・田沼意次など世間一般で悪役とされている人物に好意を抱くようになりました。
清盛は貿易によって国を富ませるヴィジョンを描き、交易の要衝である大輪田泊(現在の神戸市)を改修しました。その際、人柱を立てるべきとの公家の意見を退け、石に経文を書いて埋めたというエピソードが残されています。平安京という狭い世界で迷信に囚われて生きてきた摂関貴族にはない、先見性と開明性を持った政治家といえましょう。

(4月17日読了)★★★★
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月01日

クルマがわかれば世界がわかる

管理人の座右の銘(のひとつ)は「クルマがわかれば世界がわかる」であります。
クルマとは、単なる移動の手段や趣味の一ジャンルに留まりません。
自動車産業の動向は、世界経済を大きく左右します。文明社会の原動力である自動車は、環境・エネルギー問題とも密接です。
デザインは消費者が自動車を選ぶ際の重要な要素であり、一台のクルマの造形には生産国の歴史や文化が色濃く反映されています。また、F1やWRCなどのモータースポーツには根強い人気があります。
クルマについて知ること考えることは、政治・経済・社会・科学・芸術・スポーツなど幅広い分野の知に目を向けるきっかけとなるのです。

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そんな私の主張に同意するかのような一冊が出ました。
1945年から2010年までの日本の現代史を、毎年3ページずつ、その年を代表するクルマとともに振り返ります。
戦後の復興と高度経済成長とともに発展した日本の自動車産業。70年代にはオイルショックと排気ガス規制という逆風に見舞われるものの、80年代には世界一の自動車生産国となり、性能面でも欧米の名車と渡り合える車種も現れました。バブル崩壊後は合理化と世界的な自動車メーカー再編の嵐が吹き荒れ、21世紀に入った現在、地球環境を考慮した持続可能なモビリティ社会の構築が求められています。

本文は300ページほどですが、当初の原稿は3倍もの分量があったそうです。詳細に論じるクルマが1年に1車種だけでは、ちょっとボリューム不足。特に1989年〜90年は、日本車が世界レベルに到達したエポックメイキングな年ですから、特別扱いしても良かったような…
ちなみに1989年はGT-Rが復活した8代目スカイラインに、デザインの評価が高い4代目フェアレディZ、世界の高級車市場に打って出た初代セルシオとインフィニティQ45、世界で最も売れたスポーツカーとしてギネスブックに認定された初代ロードスター、今日のスバルの礎を築いた初代レガシィなどがデビューしています。
1990年には本格スポーツカーNSX、FF車の走りを極めた初代プリメーラ、革新的なレイアウトのミニバン・初代エスティマが登場しました。日本カー・オブ・ザ・イヤーは初代ディアマンテが受賞、税制改正によって3ナンバー車が普及したのもこの年でした。
クルマの資料としては物足りませんが、戦後日本の事件や世相・流行を振り返るのには便利な一冊です。

(3月21日読了)★★★
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月30日

縄文の種

小さい頃からずっと思ってきたこと。
それは「農業の担い手は農家でなくてもいい」。

農家は後継者不足。爺ちゃん婆ちゃん母ちゃんの「三ちゃん農業」。
戸数は年々減少し、兼業農家の割合が増えています。
農家一戸あたりの耕地面積は狭く、高コスト。
兼業農家であっても、高価な農機具は自前で揃えます。
みんな休日に農作業をやるから、機械の貸し借りはできません。
農作業に手間隙を掛けられないと、農薬や化学肥料に頼ります。
農薬は害虫だけでなく、天敵である益虫も殺してしまいます。
農薬を撒く人自身の健康や、食品の残留農薬も心配です。

だったら農業は、農家ではなく企業がやればいい。
企業が農場を経営し、サラリーマンである従業員が農作業をする。
そうすれば後継者問題はなくなるし、農家の生まれでなくても農業ができます。
農業を大規模化すれば低コスト化・省エネルギー化が可能になり、農薬の使用も削減。
資本主義の論理を持ち込むことで、かえって環境にやさしい農業を実現するのです。
そもそも農業を始めたことが、人類による環境破壊の始まりでした。
人類の営為である文化(culture)の語源は、耕すこと。いわば農業は原罪です。
人間は都市に住み、農業は効率的に行い、あとは自然の生態系に戻しましょう。

日本は貿易立国であり、輸出だけでなく輸入することも大事な国際貢献です。
ただし、貿易は輸送に余分なエネルギーを消費します(フードマイレージ)。
食料の輸入は水資源の輸入であるとの指摘もあります(バーチャルウォーター)。
では、問います。
日本が輸出した太陽電池で、他国がCO2排出を削減しました。
太陽電池の製造過程で排出されるCO2は、日本が肩代わりしたことになります。
こんなのバカバカしいから、日本は工業製品の輸出をやめるべきでしょうか。
農産物であれ工業製品であれ、最も少ないエネルギーで生産できる国で作る。
それが限りある地球の資源の有効ではありませんか。

食料自給率(特にカロリーベースの自給率)なんて、どうでもいい数値です。
食料が安全に安定的に供給されるなら、国産でも輸入でも構いません。
世界の農業国は、食料を輸出したがっています。
それでも万が一に備えて、コメくらいは自給を維持しても良いでしょう。
私は、日本から農業がなくなっていいとは思いませんから。
日本の農業は生き残って欲しいし、また生き残っていけると思っています。
農業の自由化は、日本の農作物を輸出するチャンスでもあります。

消費税が10%になっても、食料品を非課税にする必要はありません。
農業の保護をやめれば、食料価格は下げられるからです。
(そもそも複数の税率があること自体が無駄な行政コストを生みます)
農林水産省の廃止こそ、最強の景気対策ではないでしょうか。
日本の農業を強化しても、政府の保護なくしては輸入作物に勝てないかもしれません。
その場合は、専業農家に限って所得補償をしても良いでしょう。

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日本の農業は、過剰な保護を止めて世界に市場を開放し、企業の参入による大規模化を促進して、徹底的に自由化・効率化すべきです。
しかし農業の役割は、食料生産だけではありません。水田には水資源の涵養、洪水の防止といった、経済的な指標では計れない機能があります。日本の風土を育んできた昔ながらの田園風景や、里山を守るべきだとの意見もあるでしょう。
そこでアイデアがあります。機械や農薬や化学肥料を使わず、里地里山を保全し、伝統的な農村社会の民俗を継承する農家を、農業としてではなく重要無形文化財として保護すれば良いのです。
高付加価値な作物を少量生産するカリスマ農家は、食育やグリーンツーリズムの担い手ともなるでしょう。税金を投入して保護しなくても、十分に競争力があるかもしれません。

例えば、こんな農家。
平家落人伝説が残る、宮崎県東臼杵郡椎葉村。ここでは焼畑農耕が受け継がれ、縄文時代から栽培されているという在来種のソバの種を守り続けています。焼畑産のソバは粘りが強く、つなぎを必要としません。しかし値段が高く、収穫量も限られています。
椎葉村には「民俗学発祥の地」の碑が建っています。法制局参事官だった柳田國男は、有名な『遠野物語』を著す前年に『後狩詞記』(のちのかりのことばのき)で、椎葉村の焼畑について記しています。これが日本最初の民俗学文献です。椎葉村にユートピアを見た柳田ですが、のちに焼畑は自然の略奪であるとの批判的な立場に転じました。
アマゾンの熱帯雨林などで森林破壊の元凶とされる焼畑ですが、本来は自然のサイクルに則った持続可能な農業です。椎葉村では、山に火を入れる前に生き物たちに避難を促す祝詞を唱えます。
豊かな山の恵みと、それを守り続けた椎葉村の人々。日本には、まだこんな素晴らしい場所があったのかと思うと胸が熱くなります。

(3月20日読了)★★★★★

【関連サイト】
椎葉村ホームページ
ラベル:農業
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:50| Comment(0) | TrackBack(1) | 社会・思想交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月26日

LOVELOGの新機能を使ってみた

4月12日、LOVELOGの大幅なメンテナンスが実施されました。

ようやくトップページにもページ送り機能が付加。
カテゴリー別の過去記事が表示されるようになったのも良い(一番上の記事だけですが)。
タグは、関連した過去記事をリンクさせるのに使えそう。
twitterにも対応。以前から自分でtweetボタンを設置していましたが、必要なくなりましたね。
予約投稿は使ってみたい。下書きしているネタはいくつもあるけど、日々更新していくのは面倒なので。
個人的に一番助かるのは、FTPサーバーに保存されていたアップロードファイルが、LOVELOGサーバー内に保存されるようになったことですね。これまではホームページを更新するたびにLOVELOGのアップロードファイルが削除されて、BLOGから写真が消えてしまっていました。これでLOVELOGの背景に、オリジナル画像が使えるようになります。
早速カスタマイズしました。

画面が左右に間延びしてるのは、早く修正して欲しい。
時々、モバイルで表示されなくなるのも。
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 不純総合研究所 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月17日

エコな原発ありますか?(後編)

経済産業省の原子力安全・保安院は、福島第一原子力発電所事故を国際原子力事象評価尺度で最悪のレベル7に引き上げると発表しました。
頂点に達する国民の原発への不安。しかし電力需要を確保するには、既存の原発を止めることはできません。自然エネルギーでは安定した電力を得られませんし、かといって化石燃料の消費を増やすのも時代に逆行しています(私は地球温暖化の主因が二酸化炭素だとは思いませんが、化石燃料の消費削減は支持します)。
そこで安全かつクリーンな原子力エネルギーとして期待されるのが、トリウム原発です。トリウム熔融塩炉について詳しく書いた本がないかと探したところ、10年前(2001年)に刊行された本書に出会いました。

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現在の主流の原子炉は、冷却材・減速材に水を用いる軽水炉です。
しかし、軽水炉には構造的な欠陥があるといいます。
・固体燃料は放射線で破損しやすい。燃料集合体の定期的な交換が必要。
・負荷追随性が低く、常時全出力運転となる。小型炉には適さない。
・水は高温で高圧となり、放射線で分解されると爆発しやすい水素を発生する。
・ウラン燃料からは、核兵器の原料となるプルトニウムが生成される。
原子力は火力・水力よりも発電コストが低く、出力が高いのでベース電力を担ってきました。しかし裏を返せば、建設コストが高いので大規模化によって発電コストを下げ、出力調整ができないため全出力で運転しているわけです。さらに今回のような大事故が起こると損害賠償は巨額となり、放射性廃棄物の処理コストも忘れてはなりません。原発(軽水炉)の経済性は幻だったのです。

「固体燃料から液体燃料へ、ウランからトリウムへ、大型から小型へ」
本書は原子力発電の3つの革命を掲げています。
トリウム熔融塩炉には、以下の利点があるとします。
・液体燃料は固体燃料よりも、製造や管理が容易。
・熔融塩(高温で液体になった塩)は高温でも常圧で、原子炉の安全性が高い。
・負荷追随性が高く(出力調整がしやすい)、原子炉の小型化が可能。
・トリウムは埋蔵量が豊富で、世界各地に産出する(ただし日本では採れない)。
・プルトニウムなど超ウラン元素をほとんど生成せず、放射性廃棄物が減少する。
・既存のプルトニウムを燃料に混ぜて焼却することができる。
これまでトリウム熔融塩炉が省みられなかった理由のひとつが、発電時にプルトニウムを生成しないことでしょう。原発は原子力の平和利用を謳いながら、実はプルトニウムを産出することで軍産複合体の一翼を担っていたのです。

あまりに良いこと尽くめで、本当にトリウム熔融塩炉に欠陥はないのか、かえって心配になりました(笑)。
原発立地自治体の首長が「40年以上経った原発は順次運転を停止し、新規建設計画は認めない。ただしトリウム熔融塩炉なら受け容れる用意がある」と宣言すれば、日本のエネルギー政策に大転換を迫ることになると思います。福井県の西川一誠知事、いかがでしょう?
ただ、日本の大学では原子力工学が衰退しており、将来を担う人材の不足が懸念されるところです。

(4月1日読了)★★★★★

【関連サイト】
NPO「トリウム熔融塩国際フォーラム」 (理事長:古川和男)

※本書は現在品切れのようですが、5月に『原発安全革命』として復刊されます。
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ラベル:エネルギー
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2011年04月12日

エコな原発ありますか?(前編)

東北地方太平洋沖地震から1ヶ月。
想定を超える津波で冷却機能を失った東京電力の福島第一原子力発電所は、未だ深刻な状況にあります。一方、東北電力の女川原子力発電所は15mの高台にあって、津波の被害を免れました。福島第一原発の事故は東京電力による人災であって、原発そのものの信頼性が崩壊した訳ではないのかもしれません。
しかし今回の事故により、日本国内で新たに原発を建設することは極めて困難になりました。また、原発の夜間余剰電力を活用することを前提としたEV(電気自動車)の普及にも、見直しが迫られることでしょう(「自動車の電気化」という大きな流れ自体は変わらないと思います)。



もはや原子力に未来はないのでしょうか?
最近、トリウム原発(トリウム熔融塩炉)が気になっています。
そこで目についたのが、この本です。

地球温暖化対策として、温室効果ガスを排出しない原子力発電所が世界各国で計画されています。しかしウランを燃料とする原発では、核兵器に転用可能なプルトニウムを含んだ放射性廃棄物が出ます。これでは原子力の平和利用を目指したはずが、かえって核拡散を招いてしまいます。
そこで注目されるのがトリウム原発です。ウランの代わりにトリウムを燃料とすれば、プルトニウムが発生しません。さらに燃料にプルトニウムを混ぜて燃やせば、既にあるプルトニウムを消滅させることができるのです。

著者・亀井敬史はガンダム世代(1970年生まれ)で、表紙にはガンダムのイラスト。
30年以上前に放送された『機動戦士ガンダム』のアニメーション第18話には、資源としてトリウム(作中での発音はソリウム)が登場するそうです。
希土類(レアアース)採掘時の厄介な廃棄物でしかなかった放射性元素トリウムは、地球環境と世界平和を守る救世主となるのでしょうか。

(4月1日読了)★★★
ラベル:エネルギー
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 科学技術交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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