2011年01月31日

生命は宇宙で誕生した?(後編)

ピラミッドやナスカの地上絵を見て、人類の文明は宇宙人によってもたらされたとか、人類は宇宙人が類人猿に遺伝子操作をして生まれたのだと主張する人がいます。そんな人には是非とも「その宇宙人に文明を教えたのは何星人?」と聞いてみたいですね(笑)
パンスペルミア説にも同様の批判があります。最初の生命が誕生した場所を、地球上から宇宙空間へ先送りしたに過ぎないと。

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生命の起源として有力視されているのが、深海底の熱水噴出孔です。熱水噴出孔の周辺には、酸素を必要としない嫌気性生物の生態系が存在します。
しかし、パンスペルミア説にも可能性を感じます。生命が宇宙で誕生したのではなくとも、生命の素となった有機物が宇宙空間で生成されて、彗星や隕石によって地球に飛来したのかもしれません。アミノ酸のホモキラリティー(分子の偏り)が、宇宙に由来するとの説もあります。
昨年12月には、リンの代わりに砒素を栄養とする細菌(GFAJ-1)がNASAによって発表され、地球外生命の可能性を示唆するものとして話題になりました。
「ヒ素で生きる細菌」の発見が生命の定義を覆した
(月刊化学2011年2月号)


1990年、ホイルとウィックラマシンジはイギリスの科学雑誌『Nature』に、インフルエンザの流行と太陽黒点の周期が連動しているとの説を発表しました。太陽活動が活発化すると地球に飛来する紫外線やガンマ線が増加し、ウイルスの遺伝子が突然変異します。人類は新しいウイルスに対する免疫がないので、インフルエンザが流行するというのです。
宇宙線の放射が生物の遺伝子に変異をもたらし、進化の原動力になったとするヘンリク・スベンスマルクや丸山茂徳には、先人がいたわけです。こちらは逆に、太陽活動が低下する(太陽風が弱まる)ことで、地球に到達する宇宙線の量が増えるとの説明ですが。
このアイデアの先駆的な例は、マイクル・クライトンの小説『アンドロメダ病原体』(1969年)でしょう。


著者の長沼毅は、深海や極地などの極限環境に生息する生物を研究する学者です。NHK総合テレビ『プロフェッショナル』にも出演しました。
本書は(学界でまともに相手をされない?)パンスペルミア説を信仰する、異端者の告白のように始まります。版元は化学同人という理工系出版社ですが、まるでトンデモ本を手に取ったかのような気分になりますので(笑)、先にNHKブックスから出ている『生命の星・エウロパ』を読んだ方が安心かもしれません。
木星の衛星エウロパは、表面を氷に覆われていますが、その下に海があると考えられており、地球外生命探査の候補のひとつです。

(1月22日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
生命は宇宙で誕生した?(前編)
資源大国ニッポン
泰平の眠りを覚ます宇宙線
タフな奴ら。
世界は〇〇で出来ている
【関連サイト】
NHKプロフェッショナル仕事の流儀


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2011年01月30日

生命は宇宙で誕生した?(前編)

生命は、約40億年前に誕生しました。
無生物から生命が誕生したのはそのときだけで、現存する生物は原初の生命の子孫であると考えられます(生命の誕生が一度きりで、たった一個の細胞だったとは限りませんが)。
生命の誕生を再現しようとした試みとして、ユーリー・ミラーの実験が知られていますが、未だ生命を化学的に生成することに成功した科学者はいません。

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地球上で生命が発生するのは極めて稀な確率であり、地球の誕生から生命の誕生までの時間は十分ではないとする意見があります(もちろん、数億年もあれば十分だとする反論もあります)。
そこで原初の生命は宇宙で誕生し、隕石や彗星によって地球に飛来したのだとする説が生まれました。これをパンスペルミア説と呼びます(パン=汎、スペルミア=胚種)。

教科書的な常識を打ち破る新説・異説を好む私が、中学生の頃に読んで衝撃を受けた本が、フレッド・ホイルとチャンドラ・ウィックラマシンジによる『生命は宇宙から来た』(光文社カッパサイエンス)でした。特に面白かったのが昆虫に関する記述で、ショウジョウバエは地球上に存在しない波長の紫外線を見ることが出来るといいます。
昆虫は地球上で最も種類が多く、繁栄している生物です。卵→幼虫→蛹→成虫と劇的な変態を遂げる昆虫が、実はエイリアンなのだと言われると、つい信じたくなってしまいます(蛹を経ないで不完全変態する昆虫もいます)。

ホイルはイギリスの天文学者で、ビッグバン宇宙論に対抗する定常宇宙論の提唱者でした。彼はビッグバンの命名者であり、またSF作家としても知られています(つまりビッグバンとは、論敵側から付けられた蔑称なのです)。
『生命は宇宙から来た』の訳者は、科学雑誌『サイエンス』(現『日経サイエンス』)編集長の餌取章男。NHK総合テレビの児童向けニュース番組『600こちら情報部』の人気コーナー「なんでも相談」で、科学分野の回答者だった方です。

また、古い話になってしまいました…(笑)
つづく
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2011年01月25日

人虎は災厄を招く

平凡な官吏で生涯を終えることを潔しとせず、職を辞し、詩人として身を立てることを決意した唐の役人、李徴。しかし夢破れた李徴は、発狂し、行方不明となり、獰猛な人食い虎へと姿を変えてしまいました。
国語の教科書でおなじみ中島敦の『山月記』は、人虎伝と呼ばれる支那の怪異譚をモチーフとしています。

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第44回メフィスト賞を受賞した丸山天寿『琅邪の鬼』の続編が刊行されました。
戦国時代を制して天下を統一した、始皇帝こと秦王政。彼の残された野望は、不老長寿の仙薬を手に入れること。秦王は、神仙の地への入り口とされる山東半島の港町・琅邪を優遇し、12年間免税としました。おかげで琅邪は急速に発展しましたが、ひと稼ぎしようと各地から人々が流入し治安は悪化。琅邪の求盗(今でいう警察官)・希仁の前に、ふたたび難題が立ち塞がります。

琅邪山の虎が里に降りて人となり、神木の下で連続殺人が起こり、始皇帝の観光台が崩壊する…これらは古代の琅邪王の祟りなのか。紀元前が舞台の作品なので、たとえ超常現象的な事件であっても許せてしまうのですが、そこはミステリらしく合理的に解き明かされます。
本作のもうひとつの魅力である、痛快なアクションシーンも健在。小剣使いの狂生、その妻で馬術に優れた桃、上海雑技団もビックリの身軽な飲み屋の女主人・蓮。三人の武術は人間離れしていますが、事件はフェアに解決されるのでご心配なく。
最後に事態を収束させるのは、狂生の兄・無心。秦に滅ぼされた韓の出身で、国家転覆を目論んでいます。私が最も好きな登場人物です。

次回作は『咸陽の闇』と予告されています。いよいよ秦の都が舞台です。
著者は邪馬台国研究をライフワークとし、日本人のルーツを探るうちに小説の構想へと至りました。徐福たちは始皇帝と対決し、琅邪の船団を率いて日本列島を目指すのでしょうか。徐福伝説と日本建国について、著者の壮大な仮説が披露される日を楽しみにしています。

(1月17日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
ミステリに中国人が登場したっていいじゃない
棄てられた神
【関連サイト】
丸山天寿生存日記
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2011年01月24日

ミステリ好きならバカミスを読め!

ミステリには、バカミスと呼ばれるジャンルがあります。
意外な結末で読者を感嘆に導く文芸がミステリですが、意外性を過剰なまでにバカバカしく追求し、読者を笑い(時には怒り)へと至らせるのがバカミスです。
バカミスは作者が意図的に書く場合が多いですが、時には作者が大真面目に書いているのに、あまりにも非現実的な事件や非常識な登場人物のせいで、読者によってバカミスと認定されてしまう作品もあります。

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倉阪鬼一郎は怪奇・幻想小説を得意とし、翻訳家としても知られていますが、年に一冊は必ずバカミスを手掛けています。
本書は、著者が自らバカミスであると高らかに宣言した作品です。

ロンドン在住の女殺し屋シンディが、ボスの指令でニューヨークに赴任。新世界アメリカ大陸で、新たなミッションに従事します。
このシンディ、時には西海岸のサンフランシスコへ出張し、さらには大西洋を股にかけて前任地のロンドンでも暗殺者稼業を続けます。まさに時空を超えた不可能犯罪…
日常の瑣末な事件の捜査に飽き足りない上小野田警部は、本格ミステリに登場するような芸術的な犯罪を解決する日を心待ちにしていました。
そんな上小野田警部が、特命でニューヨークへ。シンディこそ、長らく追い求めた芸術的な犯罪者に違いないと目星をつけた警部は、身の危険も省みず、彼女の館へと乗り込んだのです。

最初からバカミスとの断りがあるので、登場人物の言動には注意して読みました。人間だと思わせておいて、実は動物だったりしないか…とか。
シンディとの面会を待つ上小野田警部が時間を潰したレストランのメニューが、事件の真相と深く関わっているのは、すぐに察しがつきました。
とにかく、呆れるほどにバカバカしい結末。終盤で、伏線を張った部分を(〇〇頁)と、いちいち注釈を付けているのは目障りでした。

(1月10日読了)★★

【不純文学交遊録・過去記事】
ミステリの主役は「館」
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2011年01月11日

インディ・ジョーンズは実在した(後編)

アマゾンには黄金郷エル・ドラード(黄金を塗った人の意)があると信じられ、数多くの探検家たちが熱帯雨林の奥地を目指しました。
しかしエル・ドラードは未だ姿を現さず、飢餓や疫病、先住民の襲撃などで命を落とした者も少なくありません。

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1925年、イギリス人の探検家パーシー・ハリソン・フォーセットは、未発見の古代都市を求めて南米アマゾンへと旅立ちます。長男のジャック・フォーセット、ジャックの親友ローリー・ライメルとともに。
フォーセットは、過去に何度もジャングルから生還した、屈強なカリスマ探検家です。しかしフォーセット隊は、二度と戻ってきませんでした。
果たしてフォーセットは、未知の古代都市「Z」を発見できたのか。そして彼らの消息は…
この探検史上最大の謎に、多くの人々が挑んできました。ジャーナリストのデイヴィッド・グランも、そのひとりです。

本作は、伝説の探検家フォーセットの生涯と、現代のジャーナリストの視点が、交互に繰り返されます。
少数精鋭の人員と最低限の装備でジャングルに体当たりするフォーセットに対し、飛行機や無線機など最新装備の大部隊を率いる億万長者のライス博士。対照的なライバルが物語を盛り上げます。
ビクトリア朝の大英帝国は、科学が発展するとともに心霊主義が大流行しました。そんな時代背景もフォーセットの人生に影響しています。

フォーセットと親交のあったアーサー・コナン・ドイルは、恐竜が生き残るアマゾンを描いた小説『失われた世界』を着想しました。映画『インディ・ジョーンズ』(ハリソン・フォード主演)も、フォーセットがモデルだとされています。
時代を超えて人々を魅了するフォーセットの探検譚。本作(原題『The Lost City of Z』)は、ブラッド・ピットが映画化を進めています。こちらも楽しみですね。

(1月4日読了)★★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
インディ・ジョーンズは実在した(前編)
心霊探偵コナン
【関連サイト】
日経サイエンス2010年1月号(本書を読了後にお読みになることをおすすめします)
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月10日

インディ・ジョーンズは実在した(前編)

今年は卯年。
ウサギといえば『不思議の国のアリス』が思い浮かびます。懐中時計を持った白兎を追い掛けて、ワンダーランドへと冒険の旅に出たアリス。新年の交遊は、冒険ノンフィクションからのスタートです。

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小さい頃から科学が好きで、童話のような作り話を一段低く見ていた私は、学習研究社の『学研の図鑑』や『学研まんがひみつシリーズ』を愛読していました。
しかし、なにか物語も読まなければならないと思い、実際にあった出来事をもとにしたノンフィクション作品に興味を持つようになります。
小学校の図書室で、あかね書房の『少年少女20世紀の記録』や偕成社の『少年少女世界のノンフィクション』、たかしよいちが書いた国土社の『古代発掘物語全集』を手当たり次第に読みました。
秘境探検、遺跡発掘、第二次世界大戦を扱った作品が多かったですが、なかには黒部ダムやTVA計画などの公共事業を描いた今でいうプロジェクトX風の物語もありました。

そういえば、記憶に残る最初に読んだ活字ばかりの本が、ユーリ・ガガーリンの『地球は青かった』です。あかね書房『20世紀の記録』シリーズの第1巻で、後半にはロバート・ゴダードの宇宙ロケット開発ストーリーが収録されています。表紙の写真が印刷ではなくシールだったのが、当時すでにひと昔前の本という印象でした。
一方、偕成社『世界のノンフィクション』は、英字新聞のような白い表紙がモダンな装丁でした。刊行メッセージにあった「事実は小説より奇なり」という言葉は、創作よりも科学を好んだ私の力強い支えとなりました。そのせいか、後年フィクションを多く読むようになってからも、現実を超越したミステリやホラー・ファンタジー等を好んでいます。

たまには古い本の話もいいですね。
記憶に頼っているので、事実誤認や補足事項がありましたら、ご指摘ください。
では、そろそろ本題へ。
つづく
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 17:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月03日

気まぐれサンシャイン

国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)が、昨年11月29日から12月10日まで、メキシコのカンクンで開催されました。
日本政府は、米中および発展途上国に温室効果ガスの削減義務がない、京都議定書の第2約束期間を設定することに反対を表明したようです。
外務省・気候変動問題

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地球の気候は、大気の温室効果によって温暖に保たれています。
温室効果ガスが増えると、地球の気温も上昇します。産業革命以降、大気中の二酸化炭素は増え続けています。現在、地球の平均気温は上昇傾向にあり、人為的な温室効果ガスの排出が原因だとするのが地球温暖化内因説です。
大気中の二酸化炭素は一方的に増え続けていますが、地球の平均気温の推移はそうではなく、むしろ太陽の活動周期とリンクしているとする説もあります。こちらは地球温暖化外因説です。

地球を暖めているのは、太陽からの放射エネルギーです。しかしながら、太陽放射の変動幅は0.2%しかありません。この程度では、気候にほとんど影響しないでしょう。気候変動が太陽活動とリンクしているなら、他にも要因があるはずです。
そこで注目されるのが、太陽活動の周期によって地球に到達する宇宙線の量が増減し、地球の気候に変動がもたらされるとする、ヘンリク・スベンスマルクの仮説です。詳しく知りたい方は、本書よりも『不機嫌な太陽』をお読みください。

17世紀半ばから18世紀初頭にかけては太陽黒点がほとんど観測されず、マウンダー極小期と呼ばれています。当時、地球の気候は寒冷化し小氷期となりました。
近年、太陽黒点数が著しく減少しているそうです。著者(桜井邦朋)が予測するように、地球は寒冷化に向かうのでしょうか?
今後も、地球温暖化論争を追跡します。

(12月30日読了)★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
地球の危機か自由の危機か
泰平の眠りを覚ます宇宙線
空に太陽がある限り
温暖化論議は冷静に(後編)
温暖化論議は冷静に(前編)
底抜けニッポン(中編)
エコロジーの国際政治学
地球温暖化リテラシー
マルクスさんとマルサスさん
地球寒冷化に備えよ!
温暖化詐欺にご用心!(前編)
温暖化詐欺にご用心!(後編)
地球温暖化は繰り返す(前編)
地球温暖化は繰り返す(後編)
悪魔は目を覚ますのか?
マイナス6%の覚悟
地球の現代史・不確かな真実V
不確かな真実U
不確かな真実
悲観も楽観も、いけません。
やっぱり宇宙は面白い
ラベル:地球温暖化
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2011年01月02日

天皇の正統性

1月2日、新年恒例の一般参賀が皇居で行われました。
不純総合研究所も、皇室の弥栄を祈念いたします。

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今上陛下は第125代天皇でいらっしゃいます。
歴代天皇に北朝の天皇は数えられていません。1392年の南北朝合一で、北朝六代目の後小松天皇が第100代天皇となりました。
現在の皇室の祖先は北朝であるにも関わらず、南朝が正統となっているわけですが、後小松天皇は正統な南朝の後亀山天皇から譲位されたのですから、現在の皇室はやはり正統なのです。

南北朝時代、南朝が正統であるとして『神皇正統記』を著したのが北畠親房です。
軍事的には足利幕府が擁立する北朝が圧倒的に優勢でしたが、幕府内部で足利尊氏・直義兄弟が対立します(観応の擾乱)。これに乗じて南朝方の親房は京を奪還、北朝の皇族を拉致しました。北朝は一時、皇位継承者がいなくなったのです。
尊氏の執事である高師直は「天皇が必要ならば、木か金物で造れば良い」と発言したとされます。なんとも不敬極まりないですが、それでも師直は「天皇なんて不要」とは言いませんでした。

本書の主役である北畠親房について書かれているのは最初と最後のみで、大部分は鎌倉時代の朝廷史です。本郷和人は、鎌倉幕府は朝廷に対して非常に高圧的であり、天皇に権力はおろか権威すら無かったといいます。
『神皇正統記』が主張する南朝の正統性は、ハッキリ言ってご都合主義。では「天皇の超越性」は何に由来するのか、本書から満足できる回答は得られませんでした。超越性に理由など不要、天皇は天皇だからエライのだ、と言ってしまえばそれまでですが…
それでも朝廷側から描かれた鎌倉時代史は非常に新鮮で、勉強になりました。

(12月31日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
ウラ日本史
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 18:49| Comment(4) | TrackBack(0) | 歴史・民俗交遊会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年01月01日

謹賀新年

あけましておめでとうございます。
おかげさまで『不純文學交遊録』は7年目に入りました。
昨年は電子書籍が話題となりましたが、この世で一番お手軽な娯楽は、なんといっても紙の本。テレビと違って電源は要りませんし、時間にも束縛されません。
本年も、切れ味鋭いミステリと知的インパクト溢れる良書に出会えることを期待しております。

皇紀弐千六百七拾壱年元旦 『不純文學交遊録』管理人
posted by 【電脳呆人】不純総合研究所 at 15:13| Comment(6) | TrackBack(0) | 不純総合研究所 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月31日

今年もいろいろありました

まもなく過ぎ去ろうとしている平成22年。今年もいろいろありましたが、とりわけ秋には日本の安全保障を揺るがす事態が立て続けに起きました。
9月7日、中華人民共和国の漁船が尖閣諸島付近で海上保安庁の巡視船に衝突。
11月1日には、ロシア連邦のメドベージェフ大統領が国後島を訪問。
さらに11月23日、朝鮮民主主義人民共和国が大韓民国の延坪島を砲撃。
極東アジアが世界の火薬庫であることを、改めて思い知らされました。

【送料無料】猛毒国家に囲まれた日本

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その中国・ロシア・北朝鮮の三国を猛毒国家と呼ぶのが本書。
チャイナウォッチャーとして知られる宮崎正弘と、外務省のラスプーチンこと佐藤優による対談です。

時事的な要素よりも、比較文化論的な視座で中国とロシアの国柄・国民性を論じているのが本書の特徴(北朝鮮のことはオマケ程度)。
単純に金持ちが尊敬される中国は商人の国、一方、土着の情念が強く農本主義的なのがロシアです。
あとがきによると、対談から刊行まで1年のタイムラグを要したため、時局の話題は削除したとのこと。おかげで主旨が明確になった気がします。

真正保守の復権を掲げる両者ですが、とりわけ佐藤優が「超越性」を唱えているのが印象的でした。これは天皇の問題とも関わってきます。
本書は宮崎正弘の新刊として手に取ったので、佐藤優の思想に触れたのは偶然でしたが、超越性の問題は、保守とは何かを考えるヒントになってくれそうです。

(12月28日読了)★★★★

【不純文学交遊録・過去記事】
国難は海からやってくる
不思議の国・ロシア
新たな冷戦
ロシアより“哀”をこめて
リトビネンコ氏は、なぜ殺された?
パイプラインの国際政治学
あかきゆめみし
竹島、尖閣、北方領土…
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